5月 312010
 

5月15日(大阪)、16日(東京)、日本希望製作所NPO法人化記念イベント「希望ある市民社会の創り方―日韓交流から学び、協働から高めあう」が開催されました。
今回は2日間のイベントでの内容を、東京を例にご紹介したいと思います。

企画趣旨

日本と韓国の市民活動が交流し、連携することには、単に「お互いを知ること」を超えて、どのような意味があるのでしょうか?
多くの方々に、私たち日本希望製作所の活動にふれ、関係者と交流いただくことで、共に考え始めるきっかけにしていきたい。今回の記念イベントには、そんな思いを込めて、第一部、第二部の構成にしています。

第一部は、韓国希望製作所の朴元淳(パク・ウォンスン)常任理事による講演です。ここでも何度か紹介してきましたが、韓国では韓国市民社会のリーダーとして、市民社会から厚い信頼を得ていますが、今回のイベントのために、みなさんとの交流を楽しみに来日いたします。
朴弁護士について、日本では2000年に行われた「落薦・落選」運動(政治家にふさわしくない人を選挙で落とそうというキャンペーン)のことが、特に市民 運動家の間で知られています。しかし、その「落薦・落選」運動のイメージが強いせいか、その後、「ソーシャルデザイナー 朴元淳」として活躍していること は、日本ではあまり知られていません。

朴弁護士は「参与連帯」「美しい財団」「美しい店」「希望製作所」と性質の異なる団体を次々と設 立してきました。そこで首尾一貫しているのは「市民にとって良い社会に、どうしたら変革していけるのか」という問題意識から始まっていることです。そのた めのアプローチが、時に「政治への市民の参加・連帯・監視・代案」であったり、「寄付文化づくり」であったり、「社会的企業」であったり、「まちづくり」 であるわけです。
選挙のたびに大統領や首長の有力候補として名前があがる朴元淳常任理事ですが、6月の統一地方選挙ではソウル市長に出 馬要請が各方面からあったようです。それを拒否するかのように、3月からイギリスで「社会的企業」の調査をしています。希望製作所は、イギリスの社会的企 業育成団体のリーダーの一つ「The Young Foundation」のパートナー団体ともなっています。
今回の講演では、韓国社会で様々な切り口から「希望のある市民社会」への挑戦を続けてきた経験に加え、イギリスで充電してきた次の一手のアイデア満載の話が聞けると思います。

第二部では、日本希望製作所の活動を紹介しつつ、韓国との交流によって、どのような「希望の種」が蒔かれたのか、また今後どのような可能性があるのか、各分野で活躍されている方にお話しを伺いながら、会場の皆さんと考えていきたいと思っています。

東京では、グリーンツーリズム・ネットワークセンター代表の青木辰司先生(東洋大学教授)、リサイクルとまちづくりの社会的企業エコメッセ理事長の重田益 美さん、アート系ワークショップの第1人者である及部克人さん(武蔵野美術大学名誉教授)に話題を提供いただき、市民活動や社会的企業、日韓交流などに携 わる専門家、日本希望製作所の理事が参加し、希望ある市民社会をどうデザインし、実現するかを考えます。

大阪では、福祉分野の若い社会 起業家である河内崇典さん(NPO法人み・らいず代表)、人権擁護活動に経験豊富な奥田均さん(八尾市人権協会代表・近畿大学教授)、地域のコミュニティ 力向上をテーマに活動する山口洋典さん(「上町台地からまちを考える会」事務局長)に話題を提供していただき、市民活動や日韓交流、多文化共生の分野で活 躍されてる方たちと、地域社会の希望づくりと日韓のパートナーシップのあり方について考えます。

◆報告

朴元淳常任理事の講演

第1部では、希望製作所の朴元淳常任理事の講演がありました。朴さんは、東アジアでは、自身で様々なことを考える、自覚を持った市民で構成された、いわゆる成熟した市民社会が、まだ形成されていないと問題提示をしました。そして、「人権や民主主義というのは壊れやすいものであり、私たちがそれを守って監視していかないと、鳥小屋から鳥が逃げてしまうようになってしまうもの」だと指摘しました。

そして、今年に入って長期滞在したイギリスやオバマ政権下のアメリカの事例の紹介も交えながら、「政府を批判した時には、新たなる代案を作る必要もある。そうして、一つの社会をアップグレードするためには、どうすべきか考え、それを実行に移す職業をソーシャルデザイナーと呼ぶ」と提言しています。
近年の社会起業家の動きなどにもふれ、全世界で公共の利益をビジネス的な手法で賄うという革命のように全域に広まっていること。政府、NPO、民間の間の壁が崩れつつある現状を指摘しました。

そして、希望ある市民社会の実現へ、「この世の中は夢を見る人たちのものだと思います」と、講演を締めくくりました。

第2部 日韓交流から学び合い、協働から高め合う(東京)

第2部では、日本希望製作所の過去3年間の事例から、イベントのテーマである「日韓交流から学び合い、協働から高め合う」を実感した一過性の視察ではなく、協働につながった事例の当事者の方々に、ご経験をお話しいただきました。

○青木辰司さん(グリーンツーリズム・ネットワークセンター代表、東洋大学教授)

グリーンツーリズムをテーマにした韓国の自治体リーダーの研修会を九州で行った際、当初の予定にはなかった「グリーンツーリズム推進国際宣言」を作成した経験が紹介されました。その経験から「対等な交流により相互啓発していき、継続的な発展により持続していく協発的発展という理念が日本にも韓国にも求められていく」と提言されました。

○リサイクル事業に取り組む重田益美さん(NPO法人エコメッセ代表)


韓国の美しい店を視察し、事業展開の速さと組織力の強さ、「自分たちの活動を積極的に社会に働きかける」姿勢に強い刺激を得たとお話しいただきました。同時に、自分たちの事業は、地域の自立と連合の両立を目指すことで、住民の自治力を大切にしていることが特長だと気付いたそうです。同じテーマで同じ課題を持っている社会的企業同士が出会うことの可能性に気付いたと報告されました。

○及部克人さん(武蔵野大学名誉教授)


韓国から20人の美大生を招いてのワークショップの報告がありました。韓国の美大生たちが、まちを歩いたり、体で表現したりするワークショップを体験することを通して、デザインとは、人と人のコミュニケーションを媒介するものだと気付いたそうです。これがきっかけとなり、及部さんは、韓国に招かれ、脱北者の子供たちのためのワークショップを開催しました。国際関係、交流、協働というと、言葉が先走りがちですが、アートや表現を通したコラボレーションの可能性と力をお話しいただきました。

○吉本紀子さん(国政交流基金)


日本希望製作所の「希望の種を探して」への参加を通して、世代の違う人と社会について話す、それも日本と韓国について話す貴重な機会を得たこと。そして、活動への参加を通して、韓国のスピードの速いソーシャルデザインをどんどん学ぶことが魅力だと報告いただきました。また、スタッフであるキム・ミネから、韓国からの留学生にとっての日本希望製作所という社会参画の場がある意義も報告しました。

また、当日、ご来場いただいた坂本義和さん(東京大学名誉教授)からは、競争のグローバル化が進む中、連帯の連帯のグローバル化の重要性が高まっていること、市民社会を日韓の間だけではなくて、アジアの人と、アフリカの人ともどういう風に共通の言語を作っていくのかというのを考えていくことが大切だというご指摘がありました。

これらの報告を踏まえ、桔川より、日本希望製作所として、交流支援、イベント・フォーラム、情報発信、人材育成に取り組んでいくことを報告いたしました。

そして、イベントの最後に、希望製作所顧問の崔相龍(チェ・サンヨン)元駐日大使から、市民社会は国と国の関係をも変える力ももっており、文化交流は学びあうものの永遠のプロセスであること、民主主義と人権、自由、平和などの普遍的な価値観を共有できる両国が協力することの可能性をお話しいただきました。

イベントを終えて

日本希望製作所の3年間の活動をふりかえるイベントの準備、当日の運営を通して、活動の成果として特にあげられるのは「人との出会い」ではないかと改めて強く感じました。多くの方々との出会いから、私たちは交流や協働の新しい可能性と意義を学んできました。(もちろん、このメルマガ読者のみなさまとの出会いや応援も大きな力となっています!)

この貴重な経験を踏まえて、これからも多くの出会いから生まれる協働の物語を紡いでいけたら、そして、携わると楽しい!と思える活動をつくりたい、と改めて感じたイベントとなりました。

ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。