1月 202010
 

1月16日(土)、建国大学環境科学科教授で希望製作所副所長の金才賢(キム・ジェヒョン)先生をお招きし、「韓国の地方都市におけるコミュニティ・ビジネスや文化を活かした地域再生への挑戦」というテーマでお話をいただきました。

金才賢先生は、地域資源を発掘してそれらをコミュニティの再生にどのように生かすかを希望製作所のコミュニティ・ビジネス研究所の活動として実践しておられ ますが、今回のセミナーでは韓国の地域開発政策の展開、光州市楊林洞(ヤンニムドン)における地域活性化の試み、そして全羅北道にある完州(ワンジュ)郡 と希望製作所がどのようなパートナーシップでコミュニティ・ビジネスを展開しつつあるのかを中心に話されました。


韓国におけるCBによるまちづくりの位置づけ(発表資料より)


光州市楊林洞には宣教師が土地を拓いた歴史があり、キリスト教文化を基にした地域文化の伝統があります。地元の人たちとキリスト教文化に興味を持つ外部の人 たちで構成される文化遺産保存会が中心となって地域アイデンティティを再発見する作業をした結果、キリスト教文化と近代文化を中心としたオープン・ミュー ジアムに取り組むことにしました。100年前にパンづくりが伝えられた歴史を踏まえて、地元のパン屋さんとベーカリーカフェを立ち上げたり、ガーデンづく りなどを通して地域の景観整備などにも取り組んでいるそうです。


光州市楊林洞の古い地域の様子(発表資料より)

完州郡でも隣の全州市の影に隠れがちなアイデンティティを地域資源調査から探った結果、様々なプロジェクトが起こり始めています。昔ながらの文化がたくさん 残っていてビールやマッコルリの工場などもあるので、ハウスビールや農家居酒屋などお酒を中心とした「風流むらづくり」という事業、また、砂金がとれて土 壌が黄色いことに注目することで、七つの溜池を守り、生態系を構築して環境教育にも役立てる「レインボー溜池づくり」事業、廃校や遊休施設を利用してマニ アが収集したコレクターズアイテムを展示する「コレクターズ・パラダイス」、外国から来たお嫁さんのケアという社会問題に対応する「多文化家庭ビタミンプ ロジェクト」など、自然資源、産業情報、文化芸術といった圏域別にそれぞれの特徴を活かして潜在力を育てる70もの事業が計画・実践されています。


農業と都市の交流を活かした地域づくりイメージ(発表資料より)

これらの事例においては、希望製作所が外部の視線から現場調査をし、地元の人たちとワークショップを行い、結果を整理・分析して、アイディアを出します。それらの中からどれを実践するかを地元の人たちに選んでもらい、住民自身が運営できるよう応用・発展させる手助けをするというプロセスに取り組んでいます。


完州郡での地域資源調査の様子(発表資料より)

特に、まちづくりに対する意志はあっても具体的な事業計画に至らないコミュニティにおいて、文化、歴史、自然、産業といった地域の特徴をとらえ、住民らと地 域資源調査をし、それらを評価・分析した上で街の景観づくりやコミュニティ・ビジネスを事業化していくという一連の流れは興味深いものでした。


光州市楊林洞のCB開発計画の展開(発表資料より)

そして、韓国の地域社会が一人のリーダーに任せるのではなく、みんながリーダーとして役割を担っていけるようにワークショップ等を通じて住民参加を促す必要 性、さらには現場研究での蓄積をマニュアル化して他の現場にも応用し、国レベルの政策に反映できるようにすることの重要性を強調しておられました。最近、 国の知識経済部では、コミュニティ・ビジネスを政策として取り入れる動きも始まっています。

セミナー参加者からは、「韓国の企業はコミュ ニティ・ビジネスに関心をもっているのか」、「地域再生に成功しても若者は都市へ出て行ってしまうので担い手が続かないのではないか」、といった質問や意 見が出ました。これに対して金才賢先生は、「韓国でも社会貢献に戦略的に取り組む企業が増えてきて、そのための中間組織をつくっているところもあり、コ ミュニティの収益モデルをつくる助けになっている」、「働き盛りでもできるようなコミュニティ・ビジネスを考えて、若い世代でも一緒にやれるような配慮が 必要だ」と説明されました。また、日本希望製作所のセミナーに初めて参加した人たちからは、「自分の地域での活動にも参考になりそうな貴重な話が聞けてよ かった」、「韓国では地域再生に多額の予算がついているようなので驚いた」、といった感想が聞かれました。

完州郡では2010年3月に 完州コミュニティ・ビジネス・センターが設立されます。このセンターでの活動を通してノウハウを蓄積することで、国の政策につなげていこうということで、 希望製作所も現地にスタッフを常駐させるなど、完州郡とのパートナーシップに力を入れています。韓国の地域再生に向けての動きに今後も注目していきましょ う。

<文責:島村直子>