6月 232011
 

韓国の美しい財団では、去る3月11日に発生した東日本大震災で被災した人々を支援するために、「日本大地震救援1,004円寄付キャンペーン」と銘打った募金活動を行いました。4月末までの1ヶ月半の間に、1億ウォンを越える寄付が1,114名の個人および企業から寄せられました。
韓国の市民からの心暖まるこれらの支援金は、被害が深刻な岩手県三陸海岸地域の被災住民に対する後方支援活動を行っている岩手県遠野市のNPO法人遠野山・里・暮らしネットワークに贈られることになりました。

日本希望製作所は、美しい財団と遠野山・里・暮らしネットワークとの間のコーディネート役を務め、去る6月4-5日に遠野市および被災地域を訪問しました。その時の訪問の様子を紹介します。

遠野山・里・暮らしネットワークとは?

NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク(以下山里ネット)は、「資源を生かした都市住民との交流の深化と移住の促進」、「伝統文化・芸能・技術・技芸の伝承と進化と応用」、「里地・里山における循環的な生活スタイルの再興と実践」を柱とした事業を行うことにより、社会全体の利益の増進に寄与することを目的として2003年6月に設立された特定非営利活動法人です。都市からの農村体験の希望者が増加するに伴い、新しい受入農家等の実践者を確保し、実践者間で情報交換をする場をつくり、地域資源を発掘して生かすための活動を行っています。自発的かつ草の根的に生まれた遠野のグリーンツーリズム関連の団体・グループからなるクラスター型の組織ですが、3.11後は三陸沿岸の被災地への後方支援活動に携わっているため、これらの活動は休止状態となっています。

震災後、電気が復旧してからは、日々の状況や不足している物資の提供を呼びかけるメールを各地の関係先に配信。赤ちゃんの粉ミルクをはじめ、様々な支援物資が全国から届くようになり、それらを市の屋内フットサル場で共同保管・管理しています。現在は、三陸地域の後方支援活動のために立ち上げられた「遠野まごころネット」の参加団体の一つとして、主に物資の調達・輸送と、日帰り入浴サービス等の任務にあたっています。
ホームページ: http://www.tonotv.com/members/yamasatonet/

遠野から陸前高田へ

人口3万人の遠野市は、岩手県の内陸部に位置しているために三陸海岸沿いの地域に比べて被災が少なかったことに加え、陸前高田、釜石、大槌町といった津波で大きな被害を受けた沿岸部の市町から車で1時間の距離にあるという地の利を活かし、被災者の受入れおよび被災地支援の中核基地としての役割を果たしています。

今回、日本希望製作所の訪問団は、まず、山里ネットの事務所を訪れ、韓国の美しい財団が行った“天使募金”により集まった支援金の目録を贈呈し、韓国の子供やお母さんたちからの応援メッセージのカードに日本語訳をつけて山里ネットの菊池新一所長にお渡ししました。これらのカードは、現在、「ほっとひといき事業」(日帰り入浴サービス)の現場である清養園(後述)に掲示されています。

遠野山・里・暮らしネットワークの菊池所長に菅原副理事長より目録贈呈

清養園に掲示された韓国からの応援メッセージ

その後、菊池所長の案内で陸前高田に向かいました。遠野市から南下して住田町の山々を越えると1時間程で陸前高田市へ。気仙川沿いの国道を河口に向かって走ると次第に景色が変わっていきます。「ここら辺まで津波が来ましたね」と言われた地点は河口から約3キロ。少し高いところに建てられた家を除いて、道路の両側には津波によって無残に壊された家やグシャグシャになった車の数々、他所から流れてきたと思われる瓦礫が散在していました。

津波により大きな被害を受けた陸前高田市

途中から高台の道を抜けて米崎町へ。カキの養殖業を営むOさん宅に遠野からの支援物資である野菜などを届けるためです。在宅避難者は避難所まで支援物資を取りに来るように言われても、「家が残っているのに配給をもらいにはいけない」、「何もかもなくしてしまった人たちに申し訳ない」と思ってしまいがちなので、在宅の人や親せき・知人宅に避難している人にも物資が届くように山里ネットでは被災地の人を雇用して物資の配達サービスを行っています。

Oさんはカキ筏86台を所有していた町内随一の養殖業者でしたが、4台を残して船2隻もすべて津波によって流されてしまったそうです。海岸から数百メートルと離れていないご自宅は、海抜16mの高さにあったため、床まで浸かる程度の被害でしたが、1段下に新築したご長男の家は1階部分がほぼ水没し、その下にあった2軒の隣人宅は跡形もなくなってしまっていました。

牡蠣の養殖筏が流されてしまった後の米崎の入江

船もカキ筏も失ってしまわれた一方で、一家4代10名の家族は全員ご無事だったことで、今は前向きに事業再開にむけて動いていらっしゃいます。その日は松島の業者から種ガキを買い付けてきたということで、来年秋の収穫にむけて、間もなくカキ筏の準備にとりかかるそうです。かろうじて津波を逃れたご自宅には被災された友人知人の方も身を寄せているそうで、遠野からの支援が欠かせません。悲惨な状況にありながらも前向きにこれからの意欲を語ってくださったOさんご夫妻のご様子に少し気持ちが救われるようでした。

帰路は津波で跡形もなくなっている三陸海岸の沿岸部を車で案内していただきました。巨大堤防のように集められた瓦礫の山、鉄骨だけ残ったガソリンスタンド、プールのようになってスタンド照明だけが残る野球場、抜け殻のようになった海沿いのホテル等々、被害の規模の大きさに一同言葉がありませんでした。

堤防のように積み上げられた瓦礫の山

三陸の海を臨む1本の松の木

遠野の後方支援活動の現場訪問

2日目は、山里ネットのスタッフの田村さんに支援活動の現場を見せていただきました。

団体で来遠するボランティアの人たちの宿泊所として使用

〇下組町コミュニティ消防センター/桜馬場自治会館
市内に10か所ほどあるコミュニティ・センターの中の一つ。1か所に30人程度収容することが可能。市役所経由でボランティアを団体で受け入れる場合の宿泊所になっている。上郷のコミセンは一時沿岸部の被災者の避難所として使用された。

〇たかむろ水光園(ソーラートロン温泉館)
遠野の美しい自然と懐かしい暮らし風景を再現した「くつろぎのオアシス」。太陽熱を利用した給湯暖房システムによる「トロン温泉」や宿泊施設も付設していて、園内の散策や釣りもできる。芸術館は震災により内部が傾いたため現在使用不可となっているほか、ソーラーパネルにも歪みが出ている。被災地の生活からしばし離れてほっとひといきついていただく事業につなげていきたいそうだ。

たかむろ水香園のソーラーパネル。震災の影響で歪みがでている。

〇遠野市稲荷下運動場(屋内フットサル場)
被災者支援物資の倉庫として使用しているほか、被災者が必要な品を選んで持っていくことができるバザーを開催している。支援物資の中には韓国から送られた水やわかめもあった。これからは夏物の衣類や仮設住宅に入る際に必要なものなど、需要も変わってきている。

屋内フットサル場を支援物資の倉庫として使用

〇清養園
ほっとひといき事業の活動現場。クリーンセンターで燃やしたゴミの余熱を利用したお風呂で入浴してもらい、大広間でゆっくり昼食をとってもらう日帰り入浴サービスを山里ネットが主体となって行っている。1回20人を受け入れ、支援物資もここで配布する。昼食は施設内の調理室でボランティアが提供。このサービスのために購入した魚焼き器で普段なかなか食べられない焼き魚を出したときには大喜びされたという。朝9時半に被災地の1か所に集合して、遠野までの送迎は現地の人が担当。11時に清養園に到着、4時間滞在して15時に出発、16時半に解散の1日がかりとなる。
今後、日帰りだけでなく滞在型のサービスを提供したり、カウンセリングの日、女性の日など、対象を広げたサービスを検討していくが、「まずは続けることが大事」。

清養園クリーンセンター。余熱で清養園のお風呂を沸かす。

清養園外観

東日本大震災からの復旧・復興にはまだまだ時間がかかります。被災者の方々、そして日常的に被災地で支援活動を行っている方々へのサポートを引き続き行っていくことはもとより、雄大な自然と歴史が息づく東北の地を訪れることもまた支援につながると思います。東北新幹線の新花巻駅から釜石線で1時間弱にある、民話と伝説の里・遠野を是非一度訪ねてみてはいかがでしょうか。