6月 222011
 


5月27日、韓流ドラマについて、日本の朝ドラと比較した話題提供を社会学者の和田悠さんからいただき、
参加者で討論しました。
日韓の女性たちが置かれている状況を検証しながら、日本の女性たちになぜ受け入れられるのかという話や、
ドラマの主題となりがちな家族愛や恋愛よりも、「個」を描こうとする日韓の脚本家の話など、和田さんなりの
「韓流ドラマ」の視聴の仕方を披露して下さいました。

予想に反して男性が多かったのですが、参加者のお一人、元・韓国エンタテインメント&カルチャー雑誌プロデューサの大門孝司さんが参加した感想を、ご自身の経験も踏まえて寄稿して下さいました。

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先月おこなわれた和田悠さんのセミナー「ジェンダーの視点から韓流ドラマ」には、タイトルに惹かれて出か
けてみました。とはいっても、日頃ジェンダーフリーというようなことを考えているわけでもなく、その点では
ずいぶんいい加減な参加者だったと思います。

実は僕は90年代の末からどうしても韓国カルチャー雑誌を出してみたいという考えにとらわれてしまい、
実際にもこの10年間、韓流現象のど真ん中で翻弄されつづけて来ました。
翻弄というのも、韓国の文化・カルチャーは面白い。こりゃあ、ただ事じゃあないぞ。しかし、日本人は
あまりにも知らなさ過ぎる。だいち隣国=韓国のことなんか、視野にも入っていないではないか、という
疑念に駆られていました。
そんなことで最初は旅行雑誌から始まり、次にはK-POPと、自分なりの企画書を書き上げ、練り上げ、
ダミー本まで用意して大手を筆頭に各出版社を回ったものの、片っ端からの門前払い。出版社の大幹部
(100%オジサンでした)は、チンプンカンプンだし、たとえ肯いてくれたとしても、総論賛成、
でも各論=わが社では冒険はちょっと……でした。
それでもめげずに、最初は若い読者を想定し、K-POPの雑誌を立ち上げました。若い人なら日韓に横たわ
る歴史的軋轢を乗り越えて、素直に〝いいものはいい、楽しいものは最高だ〟の心でついて来てくれるもの
と固く信じてのスタートでした。しかし待てど暮らせど、いっこうにお客様はやって来られない。
わずか5000部の実売も取れませんでした(2001年から2003年の頃)。2002年の日韓ワールドカップの熱狂
があったというのに、です。

ところが、ここで今流行りの想定外の事態が起こったのです。あれは忘れもしない2004年の4月3日。
小雨ふる羽田空港に、ヨン様が舞い降りてきた瞬間から始まりました。そうして、もう一度仕切りなおして
新たに始めた新雑誌は、日本で初めての書店ルートに流れる韓国専門月刊雑誌として大ヒット(正確に言うと、
NHKハングル講座のテキストは立派な月刊誌ですけど)、実売数万部の大記録を打ち立てたのです。
あとは戦争です。各社入り乱れ、格闘し、一時は大型書店に巨大な韓流コーナーが出現。約1年間に
わたって数十種類の月刊雑誌が書店の店頭を飾ったのです。
バブルです。滅茶苦茶でした。そして日韓の業界人はお互い勉強不足、研究不足のまま、ビジネス・ルール
抜きの混乱が続きました。
そのフィーバーを作り出し下支えしたのが、ほかでもないオバサンさんたちでした。僕は今でも彼女たちのことを
驚きと愛情とをビビンパしながら、〝韓流オバサン〟と呼んでいます。

こうした〝韓流オバサン〟たちの出現の謎を、今でも解き明かすことが出来ないのです。今回のセミナーに
出席しようと思い立った理由はそこにありました。

和田悠さんのセミナーは講義というより、お話し合い。とても雰囲気がよく、楽しかった。若い世代のさわやか
学者のスタイルには感服しました。何よりも子連れで講義をしてくれる、というところがとてもよかった。ところが
僕が期待していた〝韓流オバサンの謎〟について、先生は研究途上にあるらしく、必ずしも明確ではなかった
のですが、それでもたくさんのヒントをいただいたように思うのです。

愛すべき〝韓流オバサン〟たちは、今晩のおかずの心配をしながらも、しっかりとドラマを鑑賞し、韓国語を
学習し、そしてパソコンでの情報交換に熱心です。
なぜ彼女たちがこれほどまでに、韓国に激しく感応したのか。そして韓国ドラマを観ながら何を思うのか。僕が
社会学者だったならば、このテーマを追求するだけで一生食べていけるくらいに大きな、歴史的なテーマだと
思うのですが、いかがでしょうか?

昨今のK-POP旋風は〝韓流オバサン〟が築き上げた歴史的偉業の土台の上に、もはやその勢いは
止まりません。日本を踏み台にした旋風は、アメリカからヨーロッパへと舞台を移し、やがて巨大市場=中国
に向かって進撃する様相です。
僕はここで韓流熱風を手放しで称賛するつもりはありません。むしろ鼻息の荒い韓国勢を老婆心ながら心配
しているくらいです。コリアンパワーはいいが、足元を見よ、と。かつてのIMF危機をもう忘れたのか、と。
そして恩人でもある〝韓流オバサン〟をけっして忘れてはいけないぞ、と。

[だいもん・こうじ 元・韓国エンタテインメント&カルチャー雑誌プロデューサー blog: http://ameblo.jp/asianrally/]