6月 222011
 

福島第1原発事故以降の韓国の反原発・脱原発運動の動向を見る
    ー韓国の原発推進に衝撃を与えた3・11の衝撃
                                   川瀬俊治

安全策を充実させて原発推進は変わりなし
 福島第1原発事故後の対応を見ると、政府は福島の事故で「一斉点検の契機にしなければならない」(3月18日ー李明博大統領、5月6日に全21基原子炉の安全点検実施結果を発表)「原発を否定することはできない。原発の計画を修正する計画はない」(3月16日ーチェ・ジュンギョン知識経済部長官)など、原子炉輸出大国への方向性は揺るぎない。最近の李大統領の発言では、「日本で事故が起きたからと言って原発は駄目だと言うことは後退を意味するし、チェルノブイリ、福島よりさらに安全な原発を作るべきで、放棄してはならない」(「ハンギョレ」電子版5月18日)としている。安全対策費として1兆440億ウォンかけて2016年までに、▼古里原子力発電所の津波対策で海岸防壁を2・5メートル高くする▼非常電力供給施設に防水門と防水型排水ポンプ設置▼核燃料損傷事故での水素発生に対する除去施設の建設ーなど50項目の安全強化策を進める意向だ。

 福島第1原発事故から流れが変わってきたーG8サミット 
 こうした政府の対応をみれば、原発大国への軌跡は福島事故にもかかわらず揺るぎないようにも思われる。しかし福島第1原発事故以降、国際的な潮流と韓国国内の反原発・脱原発への傾斜が顕著になってきている。福島第1原発事故が与えた衝撃は計り知れない。
 まず国際的潮流では5月のG8サミットで顕著になった最新鋭の原発開発をめぐる攻防があげられる。飛行機が衝突しても放射性物質が漏れない安全性追求の高価格の最新鋭原発開発をめざすフランス、ロシアなどの主導権争いと、原発志向から脱したドイツの太陽光による再生エネルギー開発という「ま逆」のエネルギー政策が鮮明になった場でもあった。イタリアも脱原発を打ち出した。

 低コスト戦略の韓国には大きな課題が
G8サミット宣言はIAEAが安全性に関与し、地震地帯の原発の安全性基準を行うという、IAEAの権限強化を盛り込んだが、低価格で市場参入していく韓国には「高価格でも安全性追求」という国際的な潮流は今後大きな障壁になるかもしれない。そのことは保守系メデイアでも指摘されていることでもある。

2030年には発電量の59パーセントを原発で
 今後の原子力制作の方向付けをしたのが2008年の「第1次国家エネルギー基本計画」で、知識経済部によれば、原子力発電量の比重を現行における24パーセントから2030年は41パーセントに高め、これにより現在34パーセント水準の原子力発電量を2030年には59パーセントにする計画だ(『ハンギョレ』2011年3月28日4面)。環境運動連合が福島第1原発事故後に出した市民向けパンフ「どこでも安全な核はない」によれば2030年までの投入額40兆ウオンに及び、原発が発電量に占める率は政府発表で59パーセントだが、全エネルギー消費量の9パーセントとはじき出している(現行は6パーセント)。

反原発・脱原発集会が3月28日から
 次いで韓国国内の流れだが、反原発集会が3月28日から連続して行われたのは、福島第1原発事故からの「危機感」が生んだものだ。最初は3月28日にソウル市内中心街である明洞(ミョンドン)聖堂前で開いた。スリーマイル原子力発電所事故32年にあたるのがこの3月28日で、環境運動連合などの市民団体が政府の原発中心のエネルギー政策の廃棄を主張した。新聞報道でも大きく報じられた(『京郷新聞』29日5面、『ハンギョレ』29日1面)。
 釜山の集会に続き3回目の集会は4月26日夕方ソウル市内大学路にあるマロニエ公園で開かれた。参加者は70、80人だったが、若い人の参加が目立った。この集会は25年前のチェルノブイル原子力発電所事故発生の同じに企画した。
韓国のメディア関連の調査や労働団体との交流で訪韓していた小山帥人さん、原田恵子さんとともに参加したが、集会の主催者でもある環境運動連合のメンバーに話を聞くことができた。その中で反原発・脱原発運動は韓国内ではこれまで主に原発施設周辺地元住民によるものでは2箇所が活発とのことで、とりわけ古里原発周辺住民の運動が粘り強く行われているという。

在韓米軍核施設問題も視野に
 一方、反原発・脱原発以外に韓国では在韓米軍基地の核保有基地に対する反対運動もあることも指摘を受けた。日本では非核3原則により在日米軍基地での核施設はないとされているが、韓国の場合は核問題は原発に加えて在韓米軍基地問題もある。つまり脱原発を含む核廃絶運動は分断された朝鮮半島問題の平和と将来に見据えた統一問題も横たわっていることに認識せざるをえないのである。

 古里原発1号機の故障で稼動中断
 福島第1原発事故の1ヶ月後になる4月12日、古里原発1号機が電気系統の故障により稼働が全面中断された。原子炉の寿命は22、3年といわれているか、現行では30年基準で日韓とも稼働しており、古里原発1号機は2008年1月から31年目に突入、以降の故障などの稼働中断は3回目になる(2007年には稼働継続に反対するデモが地元住民により行われているー『釜山日報』3月29日8面)。4月12日の事故と同じ日、釜山弁護士会が稼働中止の仮処分申請を同日釜山地方院に出したほか、翌13日には反核釜山市民対策委員会と蔚山環境運動連合が古里原発1号機の稼働中断と故障の真相を公開を求めたが、その後は韓国水力原子力は教育科学技術部長官が「問題がない」とする見解を受けて5月6日から再稼働している。

 福島第1原発事故の衝撃が韓国に走るー数々の集会、宣言が出された
 古里原発については地元紙『釜山日報』が3月25日から4月1日にかけて6回にわたる企画記事「枕元にある原発 古里が不安だ」を連載しているが、その内容は本稿が制限字数を大幅に越えたため改めて紹介するとして、福島第1原発事故以降の韓国の原発推進政策変更を求める動き、・反原発・脱原発運動の動きを最後に列記したい。福島の事態を韓国の人たちが憂慮すると同時に、いまだ収束しない福島第1原発の事態に対して現行の原発稼働への不安や新炉建設に警戒感が深まり、反原発・脱原発の流れが加速している状況がある。

 3・11以後の動向 1 ― 市民共同宣言を出す誘致再検討の江原道
▼3月18日=チェ・ヨル環境財団代表、チ・ヨンソン環境運動連合共同代表などがソウル市内の環境財団センターに集まり原発拡大政策の全面的な再検討を政府に促し、日本の東北大地震犠牲者追悼の黙祷を捧げた(『ハンギョレ』3月19日6面)
▼3月22日=「日本大地震、原発事故被害支援と原発政策に転換のための共同行動」をソウル市内の世宗文化会館前で開き、福島第1原発事故を契機に政府の原発稼働寿命を越えての延長と新規の原発建設計画中断を要求する「市民社会共同宣言」を出す(『ハンギョレ』3月28日4面)
▼3月24日=新規原発で誘致申請した江原道三陟市が2010年12月に公務員を組織動員して「誘致賛成追い込み」をした文書明るみに(「ハンギョレ」電子版3月24日)
▼3月28日=エネルギー正義行動は国内4箇所の原発の半径30キロ内居住人口が総計370万に達すると発表(『京郷新聞』3月29日5面)

 3・11以後の動向 2 ― 誘致再検討の江原道
▼4月13日=全国市郡自治区議会議長協議会の市・道代表者会議は「新規原子力建設の全面再検討と、稼働寿命に達した原子力発電所の閉鎖」を決議文採択(「ハンギョレ」電子版4月13日)
▼4月15日=蔚山市市議会が「原発拡大政策再検討及び安全性強化を求める決議案」可決、古里原発1号機運転中断、月城原発1号機運転延長計画撤回要求を決める(藤原夏人「韓国 政府は原子力推進政策を継続」〈『外国の立法』2011年5月号所収〉
▼4月19日=環境運動連合はソウル市長前広場で「子どもたちに核の危険性から守るオモニたちの節約を目指すエネルギー宣言式」を行い、原発反対のデモを行った(『京郷新聞』4月20日1面)
▼5月28日=江原道三陟市への原子力発電所建設計画で崔文洵(チェ・ムンスン)江原道知事が28日、毎日新聞と会見し、「原発建設計画の再検討を政府に要請したい」と述べた(「毎日新聞」電子版5月28日)

※韓国の原発の歴史と現在の政策をまとめた第1回はこちら