3月 192012
 

去る2012年2月、韓国を代表する社会的企業中間支援組織と英国のヤング財団が、社会的企業を育成し存続させていくためのインキュベティング戦略について意見交換を行いました。その模様をレポートした韓国希望製作所の社会的経済センターの記事を翻訳掲載します。

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大魚を捉えるためのインキュベーション戦略(4)韓-英中間支援組織ワークショップ

去る2月14日のバレンタインデー。‘熱い心’を持つ人々が希望製作所希望モールに一堂に会しました。韓国と英国の代表的な社会的企業中間支援組織(intermediary)が集中討論と専門家ワークショップを行ったのです。

英国からはヤング財団のサイモン・タッカー代表、韓国からは<希望製作所>、<シーズ>、<共に働く財団>が中間支援組織の代表として一緒に参加しました。また、社会的企業に対する高い関心を反映するように、様々な政府地方自治体、大学、非営利機関関係者の方が寒い天気にもかかわらず参加して熱気を帯びた会になりました。このレポートでは、この日ワークショップで交わされた話を簡略に紹介して、社会的企業中間支援組織が今後進むべき方向性とインキュベーション実行戦略を共に考えてみます。

ワークショップに参加した4組織は、現在多様な戦略で社会的企業を育成しています。一番最近設立された<シーズ>を除いた他の機関は、すでにいろいろな社会的企業を育成した経験を持っています。<共に働く財団>の場合、麻浦センターで12件、陽川(ヤンチョン)センターで35件の青年社会的企業を生み出しています。<シーズ>は雇用労働部社会的企業振興院の‘青年社会的企業家養成事業’に委託機関として参加して35のチームを育成しているところです。<希望製作所>は自主的に企画運営した青年ソーシャルベンチャープログラム‘希望別働隊’を盛況のうちに終え、現在の城南(ソンナム)市など地方自治体、企業と連係して多様な社会的企業を育成しています。<ヤング財団>は‘Launchpad’プログラムを通じて社会的影響力を持った企業を多数排出するなど、様々なプロジェクトを戦略的に支援してきました。

「56年前マイケル・ヤング(Michael Young)が設立した<ヤング財団>は、市民の生に関心を持ち、発生する問題解決のために研究をしてきた。特に社会的問題の根本原因についての研究を主に行うことを通じた社会革新(Social Innovation)が重要なテーマだ。 社会的企業はこのような社会革新をより効果的に実現する方法の一つということができる。」―サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

「<共に働く財団>は社会的企業に関連した統合支援をする民間の財団法人だ。2009年に雇用労働部で社会的企業の底辺拡大のための“ソーシャル・ベンチャー競演大会”が実施され大会受賞チームが排出されたが、彼らに対する支援のフォローアップのために“ソーシャル・ベンチャー・インキュベイティング・センター(Soven)”を開所することになった。ベンチャー創業と関連して多様な実験を彼らと行ってきている。現在の青年ソーシャル・ベンチャーと関連して麻浦センターに12社、陽川区ヘヌリタウンに35社など、二か所のセンターで47社の企業にインキュベイティングプログラムおよび多様な支援を繰り広げている。」―チョン・サンフン 共に働く財団ソーシャル・ベンチャー・インキュベイティング・センター長

「韓国の社会的企業育成の最大の特徴は‘政府主導’(雇用労働部社会的企業振興院)という点だ。政府が目標にする“創業活性化”が青年問題の核心なのだろうか?という疑問が希望製作所にはあった。青年問題を根本的に解決するためには、思う存分夢を広げて失敗できるゆりかごがなければならないという考えだ。希望別働隊は“希望を現実に、夢を職業で”というキャッチフレーズで、必ずしも創業しなくても青年たちがこのような価値を内面化して実現してみることができるように支援プロジェクトをはじめた。」―イ・ジェフン 希望製作所社会的経済センター研究員

ワークショップで出た話を総合してみると、最近中間支援組織が社会的企業インキュベイティングに集中する理由は一つに整理されるようです。すなわち、社会的影響力を持った企業を成功裏に育成して持続的に社会革新を起こすことを通じて社会問題を根本的に解決しようとしているのです。ヤング財団の社会的企業育成プログラムは持続的な革新をという目標から始まり、希望製作所の希望別働隊プログラムも青年失業という社会的問題の原因を根本的に理解して解決するために企画されました。

たとえそれぞれに違う海で釣りをしているとしても、結局は持続的な社会問題解決という‘魚’を釣るという同じ目的を持って努力しているのです。

鯨を捕えるためには多くの準備が必要だ

韓-英中間支援組織は革新的で体系的な社会的企業インキュベイティング・プロセスの重要性について口をそろえました。社会的経済が存在感を示すことができなかった市場において、短期間創業資金を投入し、空間や画一的な教育、コンサルティングプログラムといった支援をするだけでは社会的に影響力を及ぼすような持続可能な社会的企業が市場において生き残るのは難しい、という点で皆が一致しました。

「韓国の経済はピラミッド型の特異な構造だ。どこそこの大企業によって左右される市場において、中小企業が大きく成長するのはほとんど不可能だ。社会的企業の場合、さらに状況は良くない。現在の政府認証事業によって事業者数こそ増えてはいるが、利益成果はほとんどあがっていない。政府の補助金なしでは存続が不可能な企業が大部分であると見受けられる。したがって社会的企業の事業継続に関連した問題解決のために社会的企業の体系的なインキュベーションのプロセスが必要だ。」―チョン・サンフン 共に働く財団センター長

「ヤング財団は社会革新を通じた社会問題解決のために社会的企業を育成している。ところが、一般企業に比べて投資確保が困難なことや、公共サービス市場で競争力のある企業を育成できるほどの力量がある起業家が不足していることなどが、社会的企業の成長を難しくしている。長期間かけた体系的なインキュベイティングを通じて多様な投資先を探し、投資支援を強化することによって、市場で関心を集めるくらい魅力のある社会的企業に成長させていく必要がある。」―サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

短期集中の支援プログラムは、支援期間が終わって社会的企業が自立しようとする時点でその限界をさらけ出しています。 ワークショップではこのような失敗の経験を基に社会的企業が自ら生存していけるように長期的な観点で段階別に社会的企業家の力量を強化するインキュベイティングの必要性が強調されました。 そして各機関が取り組んでいるインキュベーション戦略が紹介されました。

サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

「ヤング財団は代表的なファンディング(funding)モデルである‘Launchpad プログラム’を作って成長段階別にインキュベイティングを行っている。先に潜在力のある事業アイディアを選定して、以後18ヶ月の間、アイディアの概念化、ビジネスにおける段階別経営支援と財政支援、コンサルティングと相談・指導など、多様な‘コーチング’方法を通じて社会的企業を育成している。」―サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

「<共に働く財団>は、成長段階に合わせた統合的支援プログラムを運営している。ベンチャー成功の必須要素を、社会的起業家、ソーシャル・ベンチャー型ビジネス・モデル構築、事業力量、インフラ形成であるとみており、これらに対する支援が同時に統合的に成り立つようにする。 アイディア開発段階、ビジネス実行段階、ビジネス成長段階の三つで区分して段階別に必要な支援をしている。」―チョン・サンフン 共に働く財団センター長

「<シーズ>は支援と評価によって創業アイテムを選定する。以後、チームの力量と成長段階に合わせて‘事業遂行可能(Start-up)’と‘力量強化必要(Build up)’にグループを分け、グループごとに必要な教育およびサービスを提供する。事業遂行可能グループの場合、事業モデルを作って実際の事業現場で経験を積めるようにし、力量強化必要グループの場合は地域市場などネットワークを活用してビジネスに直接参加して仕事のノウハウを積むように支援している。」―キム・ヨンシク シーズ青年事業局長

「希望別働隊プログラムは、真摯に取り組む青年たちが自ら事業力を育て、社会でネットワークを創出できるように支援する。私たちは‘希望見聞録’を通じて青年たちが直接現場を歩き回って問題を分析し、ソーシャル・ミッションをたててネットワークを広げられるように企画した。また、関係者と専門家が一緒に集まって青年社会的企業を支持できるように‘Hope&Hopeデー’のような模擬投資説明会を開いたりもした。この過程を通して一次的なインキュベイティングを完了することができた。」―イ・ジェフン 希望製作所社会的経済センター研究員

このように韓-英の中間支援組織では皆、長期的な観点で段階別に細分化されたインキュベイティングを支援しています。 鯨のように大きい魚は、銛一つだけでは捕えにくいでしょう。捕えようと思う魚があれば、むやみに飛び込むよりは十分に準備をして海に出て行ってこそ捕える可能性を高めることができます。支援機関はその間の経験からこの点について熟考してきたようです。単純に社会的企業の数字を増やすよりは、社会的影響力と持続する可能性を持った社会的企業を育成するための配慮がよく表れています。

同じ方向、多様な戦略で

魚を捕えるのを共同の目標にしていても魚を釣る戦略には少しずつ差ができるものです。魚が生息する海の状態がいつも同じではないためです。これを考慮して捕獲戦略をたてる必要があります。ワークショップでも各機関の問題解決のための多様な戦略が紹介されたのが目を引きました。

「ヤング財団の場合、英国の現実に合った社会的企業育成にかかわる投資戦略を多様な方式で試みている。英国政府は社会的企業に直接基金を支援しないで中間支援組織に対する投資を通じて社会的企業の育成を助けている。また、社会的投資家の投資を誘致して公共部門と持続的に契約を結ぶのは容易ではなく、ファンディングが大きな悩みになっている。これを解決するために‘社会的企業家レジデンス(Social Entrepreneur in Residence)’戦略を通じて公共機関の直接的な参加と投資を導いたり、‘私たちが共同創業者(Co-founder)’により社会的企業に投資して収益として配当を受けたりする。また、社会的経済の生態系を作るために関連政府機関や企業の協力を通じて持続的な研究を行っている。」―サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

「青年という起業家の特性上、青年たちのメンターの役割をする専門家の方々が必要だった。お招きするのが難しい方々に‘優しい専門家’という席を作ってお迎えした。希望別働隊の仕上げ段階で青年ソーシャル・ベンチャーらの運転資金を作る方法について悩んでいる時、‘優しい専門家’である<共に働く世の中>のイ・チョルジョン代表の提案で基金の募金活動をすることになり、‘希望の種基金’を作ることができた。青年たちが創業のために基金を借りて後ほど返せるようにすることで、お金を貸したり返したりすることに慣れる経験ができるように企画した。」―イ・ジェフン 希望製作所社会的経済センター研究員

各機関の経験や研究結果により社会的企業育成戦略に違いが生じます。このような中間支援組織の多様なインキュベイティング戦略は、社会的企業が持つ力量を強化して市場における活動空間を広げる役割を果たしています。 同じ方向に船を出してはいるが、その時の状況に合うように適切な釣り技術を使えば望む魚をさらに多く捕えることもできるでしょう。同じ方向に走っている他の中間支援組織が互いに革新的な戦略と経験を分かち合って共に発展させていけば、社会的経済の生態系を作るのに多いに役に立つと感じました。

中間支援組織が夢見る海

中間支援組織は依然として解決しなければならない多くの問題を抱えていました。

「効果的に社会的企業を育成していくためには、政府による既存の政策事業を変えていかなければならない。社会的企業の裾野を広げて、新規の社会的企業の発掘に力を注ぐべきであるし、また、創業段階にある社会的企業だけでなく成長段階にある企業に対する体系的なインキュベイティング・システムも検討しなければならない。体系的な資金連携システムの構築や地域型社会的企業インキュベイティング・モデルを構築する方法も検討中だ。」―チョン・サンフン 共に働く財団センター長

「青年創業チーム間のインキュベイティング参加率の差が大きく、チームビルディングがうまく成り立たない場合が多い。また、チームの考えと違った助言を受ける場合インキュベイティング内容に反感を持ってチームの計画だけに固執したりもする。したがってソーシャルベンチャーチームとの関係を作っていくのに悩みが多い。」―キム・ヨンシク シーズ青年事業局長

「社会的企業の育成を成功に導き、成長させることができる社会的経済生態系を作るために頭を悩ませているところだ。段階別に体系的な支援をしていくためには政府や企業など外部ネットワークとの連携が必要だと考える。中央にある中間支援組織で‘社会的経済’という新しいミッションとビジョンをたてようと努力中だ。」―イ・ジェフン 希望製作所社会的経済センター研究員

「ヤング財団は多くの変化を経験しているところだ。公共部門との契約を結ぶ難しさのためにひとまず小規模で開始をするという方法で既存のインキュベイティング育成戦略に大きな変化をもたらそうとしているところだ。‘社会的起業家レジデンス(SEiR)’とともに外部機関との連携を通じて大規模に事業を始める方法を試みたり、潜在力と熱意がある社会的ベンチャーを探す方法も検討中だ。最大の問題は、投資金を確保してインキュベイティング・プロセスに適切に役立てることだ。」―サイモン・タッカー ヤング財団常任理事

一つの社会的アイディアを発掘してチームを組織し、適切な経営支援と財政的な支援、そして社会的企業家との関係を構築するのは複雑で難しいことです。その他にも外部との連携で持続的な投資を誘致して社会的企業が生き残っていくことができる社会的経済を構築することでも中間支援組織の役割が重要になっています。

まずは、すべての機関が社会的企業を育成するのに単純で画一的な支援では不可能だということを確認し合い、今後社会的企業が生きていくためには政府と市場の協調も必要であると言っています。社会的企業の釣り竿を一緒に持つのは中間支援組織だが、目標にする魚が生息する場所は市場、政府と市民の皆で作っていく‘海’なのです。中間支援組織ワークショップを通じて彼らがどんな海を夢見ているのかを知ることが出来ました。海は毎日変化します。そのため、さらにきれいな海を作るための中間支援組織の悩みは続くでしょう。

「社会的企業は企業と市民社会の辺境で新しい変化を作っていく組織だと考える。現在多くの社会的企業がソーシャル・ミッションをもって真剣に事業に取り組んでいる。そのプロセスにご一緒できてうれしい。」―チョン・サンフン 共に働く財団センター長

共に働く財団のチョン・サンフン センター長は発表を終えて社会的企業インキュベイティング・プロセスを‘愚公移山’に喩えました。小さいシャベルでもずっと掘り続ければいつかは山を動かすことができるだろうが、大勢で一緒にすればさらに速く動かすことができるでしょう。社会的企業インキュベイティングを行っている中間支援組織は、走る道はそれぞれ違っても進む方向は違っていませんでした。社会的経済の基盤がしっかりしていない今の状況で中間支援組織が互いに悩みを分かちあって共に歩いていくならば、もう少し速く目的地までたどり着くことができるのではないかと思います。

文:ノ・ユル 社会的経済センターインターン研究員(nyoul1002@gmail.com)

原文:http://blog.makehope.org/smallbiz/598

各団体ホームページ:
ヤング財団  http://www.youngfoundation.org/
共に働く財団 http://www.hamkke.org/
<日本語> http://www.hamkke.org/other_lang/japanese.html
シーズ    http://www.theseeds.asia/home
希望製作所  http://www.makehope.org/