5月 162012
 

韓国には現在21基の商業用原発があり、2011年時点で発電量全体の31%を占める原子力はエネルギー政策の基幹を成しています。福島の原発事故以後もイ・ミョンバク政権の原発推進政策に変化は見られず、5月始めには慶尚北道蔚珍(ウルチン)で新たに原子炉2基が着工しました。
李大統領は、「原油が一滴も出ない韓国にとって、原発は選択ではなく必須だ」と強調する一方で、古里原発で事故が隠蔽されるなど原発をめぐる不祥事が相次いでおり、反原発運動も活発化しています。
こうした中、いかに原子力依存から脱却し、新たなエネルギー社会への転換を進めるかは韓日に共通した緊急課題です。
これまでの韓国の原発政策と今後の脱原発の動きに関連して、ハンギョレ新聞のチョ・ホンソプ環境専門記者に寄稿していただきました。

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韓国の「脱核」 ― 福島原発事故後の脱原発論議の行方

日本の福島原子力発電所の事故を契機に「脱核(脱原発)」の機運が高まっている。原子力に依存する社会から抜け出し、再生エネルギーに基盤を置く持続可能な社会にエネルギー転換を図ろうという声だ。イ・ミョンバク政権になり、原子力推進政策が加速していたところに起きた福島原発の事故が転機となったわけだ。最近の脱核論議は各種討論会や単行本などの形で提示されている。「反原子力」を越えて「脱原子力」を追求するこのような動きはまだ大衆的な支持を受けて広がっているわけではないが、韓国における30余年の原子力史上初めてとなる原子力に対する本格的な問題提起として注目に値する。

「脱核」を目指すにはその出発点である「入核」がどうだったかを知らなければならないが、皮肉にも原子力の「平和利用」は軍事目的で始まった。原子爆弾を作ったマンハッタン・プロジェクトが終わった後、陸軍と核の主導権を争った海軍が原子力潜水艦を開発しながら最初の軽水炉型原子炉を採用することになった。ソ連が開発に乗り出した発電用原子炉を利用して国際的影響力広げるのを憂慮した米国のアイゼンハワー大統領は、1955年の国連総会で原子力の平和利用を宣言して開発途上国に原子力援助を始めた。韓国が原子力を推進することになったのも正にこの頃だった。核開発が政治的で社会的な選択によって行われたのであるから、「脱核」も安全性や経済性の論理だけでなく、政治的・社会的選択によって原子力発電所の未来を決めなくてはならないだろう。

韓国最古の商用原発 古里原子力発電所 (credit: KHNP)

福島原発の事故に注目するのは、韓国と日本の原子力政策が非常に似ているためだ。韓国では現在21基の原子力発電所を運転中で、2030年までに原発による発電比率を59%に引き上げる計画だ。念願だった原子力発電所輸出にも成功し、新たな輸出戦略産業に育てようという機運が高まっている。韓日両国においては、共に中央集権的な開発・支援体制によって原発産業が育成され、非民主的で不透明な意思決定構造による原子力発電計画が実施されてきた。供給中心のエネルギー政策を展開しながら、エネルギーの節約や効率性の向上は後回しにされ、自然再生エネルギーの開発はなかなか進まないのが現状だ。

原子力発電が世界のエネルギー消費に占める比率は2%にすぎず、したがって、いくら原子力発電所を増やしたとしても気候変化を防ぐための温室ガス縮小効果には限界がある。原子力がエネルギーの安全保障に寄与するというのも一種の錯覚である。高速増殖炉と核燃料再処理が費用と技術の問題で現実的でない上に、ウラン鉱石は後30年ほどで底をつくといわれる。原子力発電に過度に依存する場合、システムが不安定で大規模停電という事態を招く可能性もある。そして何よりも原発は主に電気を作るのに使われるので、輸送用の石油などの代わりにはならず、エネルギー安保に大きく寄与するのは難しい。

ドイツはそのような転換のためのよいモデルだ。原子力依存度が高い主要産業国で福島の事故以後、保守政権でありながら脱核政策を明確にしたためだ。ドイツの事例は、原子力なしでも産業社会を維持することが可能であることを見せるという点で意味があるが、誰もが真似ることはできない特殊性も持っている。ドイツが過去40年余りの間、脱原発および再生エネルギーの未来のための社会的な省察を行い、激しい反原発運動が展開された上に政策的な代案を用意したことなどの成果として今日の政策があり得たのである。

韓国において‘脱核のシナリオ’を実現するためには、全体エネルギー消費の6%、全体発電量の30%を占める核による発電の比率を変える方法を探さなければならない。そのために、新規の原子力発電所建設を中断し、ここでできる電力不足分はエネルギー需要管理と効率化で解決する。また古い原子力発電所を段階的に閉鎖して電力不足分は再生エネルギーを拡充する。それができれば2030年は‘脱核元年’になるだろう。しかしながら、政界の意思と市民の積極的な参加、そして産業界の協力なくして実現は難しい。

韓国国民の原子力発電所に対する支持は確固たるものがある。韓国原子力文化財団が2010年上半期に毎月調査した結果、「原発は安全だ」という回答が平均70.2%に達した。福島原発の事故直後に韓国社会世論研究所が調査した結果、「安全でない」という回答は55.2%で「安全だ」という回答の41.9%より多かったが、多くの先進国と比較するとまだかなり高いほうだ。ギャラップ社の調査を見ると、韓国の原子力に対するこのような信頼は世界でも中国の次に高い。その上、この調査で原子力発電所の追加建設に対しては賛成(50.8%)と反対(46.2%)がほぼ同じ割合で、誤差範囲の中では賛成の回答がむしろ多かった。長きにわたって政府が行ってきた原子力の安全性についての広報は原子力に対する神話を作り、大衆の脳裏に深く刻まれているだけでなく、技術的自立、核主権、民族的誇りを与えているようにも見える。

これまでは‘賛核’か‘反核’かの論議だけが行われてきたが、原子力発電所に未来があるのか、ないならば抜け出す道は何かを市民たちは本格的に尋ねるだろうし、市民の脳裏に焼きついた原子力神話はその過程でこわれるだろう。だが、ドイツの脱原発が一朝一夕でできたことではないように、長い時間をかけた論議と社会的投資が必要だ。

チョ・ホンソプ(ハンギョレ新聞環境専門記者)