6月 282012
 

2012年4月11日の水曜日、韓国で第19代国会議員選挙が行われた。4年振りに総選挙を迎えた韓国では、政治的な動きも国民の雰囲気も以前とはだいぶ変わった様相を呈している。本稿ではその要因を選挙の結果とともに分析してみると同時に、今年12月にある大統領選挙を展望してみたい。

選挙前

4月11日、韓国で第19代国会議員選挙が行われた。4年に一度の総選挙。多くの人々は今回の選挙で野党が圧勝すると考えていた。李明博政府の国政運営に対する国民の失望と、野党陣営が初めて候補の統一化を成し遂げた点がその理由として上げられる。企業の規制緩和、民営化、そして税金の減免といった政策をくり広げた李明博政府は、それらの政策から市場の自由化を図り、経済成長および金融の先進化を狙っていた。しかし、これらの政策による恩恵を受けたのはほとんど大手企業であり、中小・中堅企業との差は広がるようになった。それによって貧富の格差はますます大きくなり、国民は政府と大手企業が手を結んで利益を上げる様子に憤慨し、デモやストライキを通じて問題の解決を求めた。しかし、政府は国民の声に応じるどころか、むしろ強硬な態度に出た。デモやストライキをする国民に向けて暴力を振ったり、消防車で放水したりした上、ミネルバ事件のように政府がネット上でも人々を監視し処罰するなど、必要以上の人権侵害を行った。基本的な生活を脅かされた国民は、これらの脅威を取り除くために、今まで無関心であった選挙に対して関心を持つようになった。これまで統合されたことのなかった野党が一つになったのも、李明博政府への審判を下したいという国民の思いの結果であった。そして、多くの人々は、一つになった野党勢力が期待に応えてくれると確信していた。これらの理由から、選挙は当然のごとく野党統合勢力が圧勝するだろうと皆が考える雰囲気があった。

2008年7月、ミネルバというネット上のハンドルネームを持つパク・デソン氏が、韓国のネット掲示板にリーマン・ブラザーズの倒産や為替の急騰、そして金融危機の恐れから韓国経済への影響についての文章を掲載したところ、1ヶ月後に彼が書いたことが現実になり、一気に世間の注目を浴びるようになった。その後、パク・デソン氏は、検察から「虚偽事実流布」という理由で緊急逮捕され、拘束されるに至った事件のこと。

結果、そして大統領選挙への展望

19代国会議員選挙結果-赤がセヌリ党(与、152席)、金色が民主統合党(野、127席)、紫が進歩統合党(野、13席)、青が自由先進党(5席)、無所属(灰色、3席)


しかし、当日の開票は皆の予想を裏切るものであった。議席300席の内、過半数を超える152席を与党が確保する一方で、野党側の獲得議席数は140という結果に終わった。選挙前にはセヌリ党は100席も確保できないのではないかと予想されるほど、政権交代への思いは強かったにもかかわらず、結果は誰も予想しなかった与党の圧勝であった。なぜこのような結果となったのか。その答えに関しては上の地図を見てみよう。地図では首都圏と西部の地域(全羅道、濟州島)以外はほとんど赤色だ。赤色=セヌリ党が一部地域を除いて圧勝したということである。これは1960年代、朴正熙大統領の軍事独裁の時代の地域差別政策から生まれたもので、韓国では「地域主義」と呼ばれるものである。すなわち、今回の選挙は、30-40年の間に深く根づいた地域主義が政権交代の熱望に勝利したとも言えるだろう。政権交代を求める人々の声が、地域主義の壁を越えるには力不足だったのである。そしてもう一つの要因は、予想外に低かった投票率にある。今回選挙の投票率は54.3%で、前回の46.1%よりは高い。しかし、野党側支持者が願った60%には及ばず、歴代で2番目に低い投票率に留まってしまった。全体の約50%にあたるどこの政党も支持してない有権者を投票所まで足を運ばせることができなかったのが、野党側敗北のもう一つの要因である。

では、総選挙の結果からこれからの大統領選挙はどうなるのだろうか。困難が予想された総選挙を勝利に導いたセヌリ党の朴槿惠(パク・グネ)代表が、現時点では一番有力に見える。しかし、12月にもセヌリ党が勝つことができると言えるだろうか。今回の選挙で、セヌリ党は首都圏において、112議席のうち43議席しか確保できなかったのである。全有権者数の約半分が住む首都圏の選挙で野党に負けたことは、セヌリ党としては注意を要するところである。約2000万人の首都圏の有権者に対し、どれだけの票を確保するかが、大統領選挙に向けてのセヌリ党の最大の課題であろう。

そして、野党側にとっての勝利の鍵は、野党勢力の統合にある。4月の総選挙で一つになって発揮した力は、確かに以前よりは強かった。しかし、野党側は本当の意味で一つになる必要がある。志向する価値観や考え方が違うからといって、対話を断絶したり、党内を分裂させるような過去に戻ってはいけない。違いがあっても相手を尊重し、目標向かって一緒に突き進む姿勢が大事である。また、国民の代わりに李明博政府を批判するのはいいが、国民が信じられる公約や政策をしっかり立てる方が先決ではないだろうか。今回の選挙では、李明博政府への批判に重きがおかれ、せっかく出した公約の存在が薄くなった感がある。それでは国民が野党について、正しい代案なしで票を意識し批判ばかりする集団だと評価しても仕方ない。そのような誤解をさせないためにも、野党は内部の問題を何よりも優先するべきである。そうでなければ12月にもまた同じ結果を繰り返すことになるだろう。

総選挙が終わり、8カ月後には韓国のトップに立つ人を選ぶ大きな選挙が行われる。候補者には、個人や政党の利益ではなく、より全体的な視野を持ち、国や国民について深く考えて選挙に挑んでほしい。それが国民から選ばれる大統領という存在ではないだろうか。

イ・ジュンヒョン(立教大学経営学部経営学科4年)