7月 062012
 


『危機の時代の市民活動—日韓「社会的企業」最前線』

秋葉武、川瀬俊治、菊地謙、桔川純子、広石拓司、文京洙著 
「危機の時代の市民活動」編集委員会編  
東方出版 2012年3月 298ページ 2200円(+税)

私たちの時代はどんなふうに「危機の時代」なのだろう。戦争、核、原発、災害。そしてそれに並行して進む人々の危機。つまり、市場の暴力、金融の嵐、グローバリズムの衝撃、雇用の危機、尊厳の破壊、コミュニティの凋落、政治の無責任。それらは日韓両国の市民に等しく襲いかかっている。本書は働くことを奪われ、生活の危機の縁に立った市民が這い上がり歩み始めることに寄り添う活動を、さまざまに展開する執筆者たちによる共同研究の成果である。過酷な社会に垂らされた綱の一つが日韓の両方とも「社会的企業」であるらしい。韓国にはそれを規定した法律がある。日本には法律はないものの、草の根の実践は広く知られている。相互に学びあうことによって両岸の運動と活動は広がりを獲得してきた。

本書には、これらの運動のパイオニア、パク・ウォンスン(現ソウル市長)、イ・ウネ(社会的企業育成法の推進者)、湯浅誠、田村太郎、菊池新一がインタビューで登場している。「社会的企業」の定義を解説するのでなく、課題に果敢に挑戦する市民活動の道具として使い勝手を検証している。

本書を読めば、韓国の社会的企業の歴史をさまざまな文脈から理解することができる。資料的にも韓国「社会的企業」最前線の格好の導き手となろう。しかしそれだけには留まらない。日本の市民活動も社会企業的な文脈から掘り下げられている。NPOだけでは見えてこなかった活動に光が当てられている。これも成果だ。そして、その活動は波のように反射して、韓国の社会を揺り動かすまでになっている。さまざまな制度は日韓両国とも反響の産物だ。真に効果的な貧困対策・生活支援制度(日本でいえば生活保護制度、韓国でいえば国民基礎生活保障法の改善)は喫緊の課題である。それに、働くための制度である「社会的企業」が主役の座をとりつつある。

危機の時代にあって、人々の失われた希望を取り戻す試みが本書には溢れている。その様子を気鋭の研究者・活動家が描いて見せた。その書物を仏教やアジア関連に強い大阪の出版社、東方出版から上梓。時に拡散しがちなテーマ、時間が経って風化かしがちな社会現象について、編集者が情熱を込めて作り上げた書物でもある。背景が丁寧に解説され、このテーマについての予備知識が乏しい読者にも苦痛なく理解できる。

(評者:菅原敏夫)

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