11月 052012
 

食品ロスと貧困
 日本では年間約1788万トンの食品が捨てられています(2009年度推計:農林水産省)。このうち500万トン~800万トンは、品質に問題がなくまだ食べられるのにさまざまな理由から捨てられている「食品ロス」といわれています。毎日、膨大な量の食品が食べられることなく廃棄物として処分されています。
 一方、2007年の厚生労働省の調査によれば、過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食品が買えなかった経験を持つ世帯が、全世帯のうち15.6%にのぼっています。内訳を細かく見ると、単身高齢男性世帯で約25%、ひとり親世帯で約38%が「食べ物に困る」経験をしています。
 1980年代以降、高度消費化社会が進展する中で「国民総中流化」意識が進み、「貧困」といえば過去の話か、開発途上国の栄養失調の子供たち、といったイメージで語られてきました。しかし、バブル崩壊を経て経済が沈滞。2008年のリーマンショック後には製造業労働者の大量解雇(派遣切り)が起こり、失業率の上昇や非正規労働の拡大と軌を一にして生活保護の受給者が急増していきます。2009年に政府が発表した日本の相対的貧困率は15.7%でOECD加盟国では下から4番目となっています。

フードバンクちばの開設
 私は現在、ワーカーズコープちばという労働者協同組合で働いています。ワーカーズコープは人や地域に必要な仕事を地域の人々が出資し自ら働く協同組合で、この30年ほどの間に、全国に広がっています。ワーカーズコープちばは25年前に千葉県船橋市で設立され、清掃や物流センターの委託業務、ホームヘルパー、給食などさまざまな事業をつくってきました。2011年4月からは、自治体からの委託事業で、生活保護受給者の支援事業を主に行う「サポートセンター・オアシス」を千葉市に開設しました。
 今年(2012年)5月、サポートセンター・オアシスの事業として「フードバンクちば」の活動を開始しました。フードバンクとは、企業や家庭から品質に問題がなくまだ食べられるのに捨てられている食品を寄附してもらい、福祉施設や困窮する個人に無償で提供する活動です。1960年代にアメリカで始まった活動と言われ、日本では10年ほど前に東京で最初のフードバンクができました。現在はこの日本最大のフードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン」が各地のフードバンクを支援する体制をとっており、私たちのような開設したばかりの団体も合わせると全国で30以上の団体が活動しているようです。ただ、日本ではフードバンクを支援する法制はまだなく、各地で手探りで進められている状況で、いくつかの団体を除いて、ボランティアを中心とした小規模な活動がほとんどです。
 私たちがフードバンクを始めたきっかけはいろいろありますが、主な理由としては、これまで千葉県内にはフードバンクがないこと、サポートセンター・オアシスの事業を行う中で支援が必要な困窮者が大勢いることが見えてきたこと、そして仕事に就けない生活保護受給者の活動の場としてフードバンクを活用できないかと思ったことなどでした。
 2012年5月の活動開始より、新聞やラジオなどで取り上げられたことや、また弁護士や福祉関係者らがつくった県内の貧困問題を考えるネットワークに参加したこともあり、多くの反響がありました。

食品を集める
 現在、食品の多くはセカンドハーベスト・ジャパンを経由して企業等から提供されていますが、県内の食品企業から賞味期限が近づいた調味料や袋に穴があいて販売できなくなった米なども提供していただいています。また企業が災害用に備蓄している飲料水や食品などの寄贈の申し出も増えてきました。5月から10月までの間でのべ約10tの水や食品が集まりました。また、地域の人々に呼びかけて家庭で余っている食品を集める「フードドライブ」という取り組みも行っています。9月に約3週間行ったフードドライブでは、千葉市社会福祉協議会に窓口となっていただき、約170kgの食品を集めることができました。その後も、食品を寄贈したいという電話が時々かかってきています。

食品を提供する
 提供する先の種類は大きく2つで、ひとつは、団体や施設への支援です。現在の提供先としては、ホームレス支援団体(炊き出し)、薬物依存者の自助組織、障害者支援団体、高齢者施設、フリースクール、児童自立支援施設、困窮者向けの住宅支援団体など10団体ほどで、月1回のペースで食品をお渡ししています。いずれも、公的な支援が無いかあっても少ない団体で、日常的な給食や活動時のおやつなどに使ってもらっています。また、今年の夏には、県内企業から提供された2.7tの飲料水を福島県相馬市で被災者が活動するNPO団体へ提供しました。相馬市や南相馬市は福島第一原発から近いため放射線量が高く、水道が復旧した現在でも子どもを持つ家庭の多くは飲料水を購入しており、家計の負担が大きいためです。

福島県相馬市での水の支援

 提供先のもうひとつは困窮する個人への支援です。ただ、フードバンクとして個人のニーズを的確に捉え、支援することは難しいため、行政や民間の相談支援窓口を通じて提供することにしています。具体的には、弁護士、民生委員、訪問介護事業者、千葉県の総合福祉支援窓口である中核地域生活支援センター、高齢者支援の公的窓口である地域包括支援センター、国が今年から始めた24時間365日の電話相談である「よりそいホットライン」などを経由して、食品支援の申し込みが届きます。この11月5日からは、千葉市社会福祉協議会と正式に連携し、社会福祉協議会の窓口に福祉貸付等の申請に来られた方で緊急で食品の支援が必要な方に提供できるようになりました。

困窮する個人への支援
 これまでに実際に行った支援の例を紹介します。
1)【?代男性】民間支援相談窓口より
 車上生活をしている方の生活保護申請を支援しているが、当面の食品が必要との依頼。すぐに食べられるものを支援窓口の方に手渡す。
2)【60代女性】弁護士より
 千葉県弁護士会の弁護士より、自己破産の手続き中の方で社会福祉協議会のつなぎ資金の借り入れが出来るまでの食品支援の依頼。お米、お茶、お中元の海苔やふりかけ、醤油などとお菓子を弁護士事務所の方に渡す。
3)【50代男性】中核地域生活支援センターより
 病気で退職後正規の仕事に就けず、生活保護申請をしたが却下となった。現在、再申請を考えているが、つなぎの生活資金を社協より借りるまでの食品支援の依頼。即日宅急便で米、ツナ缶、お茶、お菓子など送る。
4)【30代男性】「よりそいホットライン」より
 県内在住で生活保護を受給しているが、現在、残金400円で食べるものが無い。次回支給日まで2週間の食品として、米、コーンフレーク、インスタントラーメン、スープの素、そうめんなどを宅急便で送る。
5)【30代女性】A市社会福祉協議会より
 2人の子(小学生)のとの3人世帯。本人は、鬱病を患っており、1年以上働いていない。この間は、子ども手当、児童扶養手当と預貯金で生活してきた。症状が良くなり、職業訓練講座に通う予定。訓練に伴う生活給付金(10万円)が入るまでの支援を希望。

 いずれも、今日・明日の食べる物に事欠く状況で、緊急の支援が必要ですが、公的な制度では対応できないものがほとんどです。これまでは放置されてきたか、福祉関係者が身銭を切って支援してきたケースが多く、フードバンク食品を活用した支援のモデルを創っていきたいと思っています。

ランチミーティング
 フードバンクちばでは、この他に毎月1回、フードバンク食品を利用した食事を提供するランチミーティングを開催しています。おもに生活保護を受給している方に呼びかけ、毎月10人ほどが集まっています。生活保護を受けている人で、特に単身の方などはなかなか外に出かける機会もなく、人と話す機会も少ないため、毎月テーマを決めておしゃべりをしたり、就職や職業訓練の情報提供を行っています。このランチミーティングを通じて、ボランティアや職業訓練、アルバイトなどに参加する人も生まれています。

今後の展望・課題
 活動を始めてまだ半年ですが、フードバンク活動は社会的に関心が高く、また潜在的な利用者がまだまだ沢山いることを感じます。社会福祉協議会など公的な仕組みも通じて、フードバンクの支援を県内全域にいかに提供するかが今後の課題です。一方で、フードバンクはそれ自体ではお金を生み出さないため、継続していくためには寄付や助成金などを確保していくことや、他の事業と関連させて進めていくことも考えています。
 フードバンクは公的な制度や支援のない、純粋な民間の活動です。食品を寄贈する企業等の条件はありますが、基本は「食べる物に困っている人なら誰でも支援する」ということで、行政にはない柔軟な対応ができることが特徴なのではないかと思います。千葉県で始まったばかりのこの活動を、地域のさまざまな個人・団体との関わりの中で大きく育てていければと思います。

菊地謙(ワーカーズコープちば専務理事/NPO法人日本希望製作所理事)

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障害者支援団体への食品の提供

<食品大募集>
 フードバンクちばでは、家庭や企業で余っている食品(常温保存可能な物)を募集しています。
□ 穀類(お米、麺類、小麦等)□ 保存食品(缶詰、瓶詰等)□ 調味料各種、食用油
□ インスタント食品・レトルト食品 □ 飲料(ジュース・コーヒー・お茶等)□ 乾物(のり・豆など)□ ギフトパック(お歳暮・お中元等) などなど。特にすぐに食べられる缶詰やレトルト食品、インスタント食品など大募集です。賞味期限が1ヶ月以上残っているものをお願いしています。

(お問合わせ) フードバンクちば http://foodbank-chiba.com/
〒263-0023 千葉市稲毛区緑町1-25-11コーポ立花101
Tel:043-375-6804 Fax:043-242-8900
e-mail:fbchiba@jigyoudan.com