3月 202013
 

シニアの “見慣れない学校”

“知恵のある学校(U3Aソウル)”(以下、知恵のある学校)は、希望製作所の退職者教育プログラムである“幸せ設計アカデミー ”の修了生たちが中心になって、英国のU3A*を母胎に2011年6月に作られ生涯教育プログラムです。「誰もが教え学ぶ学校」というモットーの下、純粋なボランティアで運営され、誰でも伝えたい知識と知恵があれば講座を開設することができ、誰でも授業に参加することができます。
 去る3月8日に第5期の受講生を迎えた“知恵のある学校”では、開講式ではなく開講パーティーが行われました。学校でパーティーって?開始から風変わりな“知恵のある学校”の歩みを覗いて見ようと開講パーティーに行って来ました。
 “知恵のある学校”の運営スタッフは、フォーマルな硬い開講 “式”より自由に楽しむことができる “パーティー”で春学期を開講しました。開講パーティーに出席した人々は、慣れない経験に少しぎこちないながらも見知らぬ経験に強い好奇心を寄せていました。運営スタッフの素朴でありながら細やかな心遣いで用意された開講パーティー、そこに集まった生徒と講師の顔には暖かい春の陽射しが差し込んでいるようでした。
 “知恵のある学校”は、韓国社会では見慣れない形の学校です。韓国社会では、教育とは「一定のルールと規律の下で、教師は教え、学生は学ぶ」というのが一般的です。正規の教育だけでなく、生涯教育の分野でもほとんどこの原理を基本にしています。したがって、大多数の韓国人は、教える人と学ぶ人がはっきりしている教育に慣れています。
 このような一方的な教育方法の限界が提起され、様々な教育方法や指導方法の研究と実践が行われています。しかし、教育の原則を変える試みはほとんどありません。単純に見える思考の転換のようですが、このように革新的で見慣れない教育システムで運営されているのがこの“知恵のある学校”なのです。
*U3A= University of the Third Age  http://www.u3a.org.uk/

講師の別名はコーディネーター

“知恵のある学校”は、母胎になった英国U3Aのシンプルでありながら洗練された教育原則を採用して運営されています。「自分が知っていることは人に教え、自分が知らないことは他の人に学ぶ」というのがまさにその教育原則です。
 この原理は、全体の講座を構成する場合にも適用されますが、個々の講座を行う場合にも適用されます。たとえば、「花を育てる」という講座を進めるとき、受講生の中に土の専門家がいる場合には、土についてはその受講生が知識を分かち合うことにし、肥料づくりに造詣の深い受講生がいれば、その部分についてはその受講生が知識を共有できるように講師が授業を調整するということです。
 このように“知恵のある学校”の講師は、従来の概念でいう教師ではなく、授業を調整し、組織するコーディネーター(coordinator)またはオーガナイザー(organizer)としての役割を果たします。講師と受講生が共に学び教えるという二つの役割を持つようになり、能動的に学習に参加する可能性が高くなりました。もちろん、知識の伝達を目的とするいくつかのクラスでは、伝統的な講師の役割が強調されますが、その場合でも、講師は知識を施して共有することより、受講生と授業を一緒に作っていくということに重点をおきます。
 “知恵のある学校”の運営スタッフは、この原理と趣旨に共感し、それらを広める機会を持とうと、継続的に講師のワークショップを行うことなどを計画しています。

知恵のある学校を動かす “シニアボランティア”の力

英国U3Aの運営スタッフによれば、彼らの強みは、シニアの自発的な参加で作られた組織だということです。完全に自発的で、自由な教育システムを備えているため、財政、組織面での独立を確立するための努力が払われています。その努力の中核をなしているのが、“ボランティア”です。講師はもちろん、運営スタッフまですべての人がボランティアで参加しており、実際の運営費は会費でまかなわれています。このような形態が可能になったのは、英国が奉仕活動の社会的経験が豊富で、これらの経験を教育にも取り入れたからです。
 韓国の“知恵のある学校”も準備段階から今までボランティアの重要性を強調し、その哲学を共有しています。したがって、シニアで構成される運営スタッフは、企画、広報、授業の進行、組織運営に伴う様々な業務に自分の時間と労力を提供し、無報酬であたっています。
 このような“知恵のある学校”の運営方式は、ベビーブーム世代の社会貢献活動の良い事例となっています。また、退職したシニアたちが講師および受講生として“知恵のある学校”に参加し、高齢化時代にシニアが参加できる生涯学習モデルを自ら作りつつあります。

第2の“知恵のある学校”の誕生

一般的に、企業では新しいプログラムやアイディアについて、そのオリジナリティを主張したり、ノウハウを独占しようとします。しかし、“知恵のある学校”は、いろいろなところで始まった類似のプログラムについてオリジナリティを主張するどころか、この種のプログラムの哲学や方法が共有され、拡散することを歓迎します。これは、“知恵のある学校”が自発的共同体である協同組合の形態をとっており、すべてのことを分け合って一緒に享受するという原則に忠実だからです。むしろ“知恵のある学校”のシニア運営スタッフたちは、このようなプログラムが全国に広まることを強く希望しています。
 実際にいろいろな地域で同じような形の教育が始まっています。水原生涯学習館の“誰でも学校”、ソウル恩平区生涯学習館の“隠れたプロ教室”、U3A盆唐(ブンダン)などは“知恵のある学校”と類似の目的と趣旨をもって、その地域の特色に合わせたプログラムを進めています。これらのプログラムは互いに競争するのではなく、交流を通じて発展する方向を模索し、互いを応援し合いながら新しい学習の場を一緒に開拓しようとしています。

場所も、方法も、参加も自由に

家で 「コーヒー・スクール」を開くのが夢だというあるシニアの人は、今回は自信がなくて講師登録をすることができなかったが、これからコツコツと勉強して「コーヒー・スクール」の講師として挑戦する、と抱負を述べました。これに対し、「ラテン語を学ぶ」授業を準備した講師は、「ラテン語を学びたい気持ちが強かったが、一人で勉強する自信がなかったので授業を開設しました。このような心持ちであっても十分に一緒にできるのが“知恵のある学校”です」というアドバイスを寄せました。このアドバイスにより受講生として参加したあるシニアの人は、「こういう“知恵のある学校”のコンセプトがいい。だから講義聞くことが楽しく遊んでいるようだ」と感想を述べています。「本を書いて出版する」授業に参加した受講生は、実際の本を作ることができ、授業を楽しむだけでなく、満足のいく成果物を手にすることができたという話をしてくれました。
 こうした話を聞いてみると、授業の場所も、授業の方式も、授業を開設する理由も、授業に参加する動機も、授業内容にも特別なルールがないことがわかります。どんな形式でもすべて許可されるということです。形式を無視するのではなく、どのような形式であっても自由だということなのです。

見慣れない教育システムで運営されている“知恵のある学校”で自由に教え学んでみませんか?

<補足>
“知恵のある学校”運営に最も大きな障害となっているのは、授業をする場所を見つけることです。公共の場所の場合、一定期間レンタルをすることが容易ではなく、運営費が会費で充当されるため、一般的な空間をレンタルすることも困難です。ところが、最近、一部の授業を行うことができる空間を寄付されました。使用できるのは一部の時間だけなので、運営スタッフの場所確保についての悩みは続きますが、このような協力者の出現は、“知恵のある学校”の純粋なボランティアたちの歩みにとって大きな力となっています。

文: ベ・ヨンスン(シニア社会貢献センター上席研究員)
写真: ナ・ジョンミン(眺める写真館代表)

韓国語原文:http://www.makehope.org/4326