7月 312013
 

7月13日に日本希望製作所主催で、韓国の協同組合基本法 現状報告フォーラム「協同組合×起業=コミュニティ」を世田谷の生活クラブ館で開催しました。

当日は韓国協同組合研修所のキム・ギテ所長に基調講演をお願いし、60人を超える参加者が韓国の最新の事情を聞くことができました。

2012年12月に法律が施行して6ヶ月。基本法制定以降にできた協同組合は1265団体にのぼります。露天商の人たちがつくった露天商フランチャイズをつくろうという動きの中で生まれた協同組合や宝石の加工、デザイン、販売などを行う人たちが集まってつくった協同組合、靴作りの協同組合などいくつかの事例の報告がありました。社会的協同組合も37件が認可されたと話していただきました。確実に法律制定の効果がでて市民社会が大きく変化しているのではないかという気がしました。

協同組合の発展は確実に市民が地域社会の中で主人公として活躍するために有効な道具となる得るものだと考えます。

ワーカーズコープちば専務理事の菊地氏から、そして生活クラブ東京の専務理事の村上といった日本で協同組合を実践しているメンバーからのコメントでも、日本社会でどう協同組合を発展させていくかこれから韓国の実践が大いに参考になるということが話されました。 <村上彰一> キム・ギテ氏の講演内容は以下のとおり。 ***** IMF通貨危機以降、協同組合基本法ができるまで

韓国では、IMF通貨危機以後に社会的経済に関する議論が始まりました。韓国はIMFを4年で抜け出しますが、失業が拡大し、二極化現象はさらに深刻になりました。拡大する社会サービスの雇用を80万創出し、2000年には政策を強化し、社会的企業を育成しなければならないという議論がおきました。そして紆余曲折を経て、2007年に社会的企業育成法が制定され、社会的企業の進出が拡大しました。社会的企業は雇用労働部の管轄ですが、安全行政部ではコミュニティマウル企業、農林畜産食品部では農漁村共同体というように、多様でありながら類似した政策が作られました。2007年頃には500ほどの社会的企業が認可されましたが、様々な政策が入り交じるようになると、2011年に社会的企業を活性化するための企画チームが青瓦台内に編成され、類似の政策は予備社会的企業として調整されました。韓国の社会的企業の8割は、ヨーロッパの社会的協同組合と類似していたので、協同組合基本法を作ろうという動きが起こりました。そのような経緯で、2011年12月29日に電撃的に協同組合基本法が国会を通過しました。
大きく分けて三つの議論が統合されて、現在の協同組合基本法は作られました。一つ目は、すべての協同組合は非営利団体であることを強調する議論で、民間の協同組合が連携して作成し、当時、第3党だった民主労働党のイ・ジョンヒ代表が提出しました。二つ目は、この法律の特徴として、商法上の有限責任会社と同じように有限責任会社を協同組合と見なし、独占禁止法の色彩を強く打ち出した、当時野党第1党だった民主党のソン・ハッキュ代表が出した民主党案。三つ目は、青瓦台の企画財政部が与党と一緒に作った協同組合法案でした。最初の2つの案を調整してまとめ、一般協同組合と社会的協同組合に分け、社会的協同組合だけを非営利団体として認めるようにし、与党と第1、第2野党の代表級が念入りに準備したことにより、協同組合基本法は全会一致で可決しました。当時、国会において4年間で全会一致で可決した法律が3件しかなく、そのうちの一つがこの協同組合基本法であり、大韓民国の国民統合に大きく寄与した法律だと思います。そして、1年間の準備を経て、昨年12月1日から協同組合を自由に作ることができるようになりました。

基本法施行後にできた面白い協同組合

基本法成立当時には想像もできなかったような様々な協同組合が作られていて、法律を作るのに関わった私自身も戸惑っています。中でも面白い協同組合をいくつかご紹介します。一つ目は、町で商売をする露天商の人たちが作った協同組合です。自分の生活だけをよくするのではなく、他の露天商をサポートして教育し、自立・成功するための露天商フランチャイズを作ろうという動きの中でこの協同組合が作られました。二つ目は、宝石協同組合です。韓国に観光行くと鐘路の方に宝石商がたくさんありますが、宝石を加工する人、デザインする人、販売する人など、宝石にかかわる様々な人たちが集まり、昨今難しくなっている宝石ビジネスを活性化させるために作られた協同組合です。

また、ソンス洞の手作り靴協同組合という面白いものもあります。大企業によって工場で作られたものや中国から入って来る靴が多い中、この協同組合は国内において手で靴を作る人たちが集まり、共同ブランドを立ち上げるためにつくられました。このほかにも、韓国の子供たちが、タイやベトナム、フィリピンから韓国に嫁いできた高学歴で英語ができる女性たちから英語を教えてもらうことを目的に作られた協同組合もあります。法律が施行されて約6ヶ月でこうした協同組合が1,355も作られました。

一方、一般協同組合は、株式会社として登録することができ、1,272件の申請のうち1,165件が登録されました。社会的協同組合は76件が申請し、37件が認可されました。昨年の調査の結果、今後5年間で約1万件程度の協同組合が作られると予想しています。地域的に見るとソウルが最も多く、その次に京畿、光州、釜山の順です。ソウルと全羅北道のような場合には、広域地方自治体長が協同組合へ高い関心を寄せています。

もう一つの特徴として、事業者協同組合が788件と多くを占めている点です。事業者協同組合がこのように多い理由は、小生産者あるいは住宅路地商圏の経営環境が悪化しているため、競争力を高めるために多くの協同組合がつくられていると見ることができます。職員協同組合も231件と多く作られていますが、これは労働者協同組合だと考えればよく、より中立的な「職員」という言葉を使い、協同組合を作って頑張ってみたいという意欲のある人たちによって作られました。

既存の協同組合に与えた影響

協同組合基本法が施行されてから多くの協同組合が作られたことで、既存の協同組合で活動する方々にもモチベーションを与えています。既存の生協や信用協同組合のような社会的企業の進歩勢力や起業家、自活支援事業などが集まって韓国協同社会経済連帯ができました。現在では常設的な連帯機構となり、長期的には協同組合にかかわる諸々の動きをより一層活性化させる役割を果たしていくでしょう。

また、この6月28日にソウル市に協同組合協議会が創設され、ソウルにある多くの協同組合が参加しています。生協、信用協同組合などが集まって最近17の組合ができ、区ごとに協同組合協議会を創設する動きがあります。全羅北道には、全羅北道地域開発協同組合が作られました。韓国協同組合の連帯機構と同様に、全北の協同組合、社会的企業、自活マウル企業などの民間活動家たちが集まって9ヶ月間の共同学習の結果、ケベック州の地域開発協同組合にならったものを韓国にも作ろうという趣旨で設立しました。ここでは、土曜日に6時間ずつ勉強をして協同組合の活動家を養成し、市郡単位の協同組合の設立を支援しています。韓国は、政府の援助による支援組織が非常に充実していて、市道別の協同組合を設立するネットワークを作りました。この組織は、従来のような韓国の社会的企業を中間で調整する組織とは異なり、協同組合の連合会が作ることができるように支援する役割を果たしています。

生協について少しお話すると、韓国の生協は初期の頃に日本から多大な援助を受け、様々な生活協同組合をつくって活動しています。多くの生協の指導者が協同組合基本法を作るための運動を様々な形でサポートしてくれただけでなく、実際に協同組合基本法ができてからは、アイコープ生協連合の職員たちが別のアイコープ協同組合サポートセンターを社会的協同組合としてつくり独立しました。一般的に生協連合会が経営的に安定すると、従業員の緊張が緩む傾向があります。既存のアイコープの連合事業を成功裡に作ったノウハウをもとに、アイコープ協同組合事業をアウトソーシングしつつ、同時に基本法下でできた協同組合をサポートするために、別に独立した社会的協同組合を作ったのです。

また、別の生協である幸せ中心生協連合会の場合は、現在、基本法の消費者協同組合に転換することを検討しています。医療生活協同組合というのがありますが、ここは基本法下の社会的協同組合に転換する事業を進めています。なぜなら、医療生協は、様々な協同組合の医療生協が二次協同組合として作った性格を持っているので、生協ではなく基本法下の協同組合として労働連合を作り、基本法における社会的協同組合に移行しようとしています。そのような動きの中で市町村で各医療協同組合を作ろうという組織が増えています。ハンサルリム連合というところでは、女性労働者協同組合と1年間かけて一緒に開発・販売するプロジェクトを進めています。アイコープ生協はソンス洞の手作り靴協同組合と協力して、最近、組合員向けに手作り靴の販売を始めました。

協同組合の“生態系”

協同組合基本法ができてから、協同組合の“生態系”についての議論が進められようとしています。消費者協同組合である生協は、協同組合の生態系にとっての胃腸のような役割を果たしながら、生産活動組合や協同組合についての消費者の産業活動、組合活動を通じて多くのサポートをすることができると期待しており、実際に多くの消費者協同組合、生協の指導者たちも、そのような活動をしています。協同組合基本法では、基本法によって作られた協同組合、連合会を作ることができますが、他の法律によって作られた協同組合とは統合することができません。しかしながら、協議会を作ることはできますので、それにしたがって、生協の指導者たちや既存の生協が地域別協議会を作る中心となって活動しています。

前に述べたように、ソウル市協同組合協議会もアイコープとハンサルリムの主導で作られましたし、全国的には20~30の協同組合で協議会をつくろうとしているほか、ハンサルリムの理事や理事長を務めた方々が中・高等学校に協同組合を作ろうと積極的にかかわっています。韓国の生協運動は日本の生協の後を追ってきましたが、うまくいっていない部分もあります。しかし、今、基本法が作られて小さな協同組合もいろいろとできるようになったことで、韓国で生協についてもより積極的に再検討が行われるようになりました。

韓国の場合には、社会的企業は政府に認められてこそ社会的企業という名前を使うことができる制度となっています。協同組合基本法をつくる際、社会的協同組合として認可されると、社会的企業として簡単に認定を受けられるようなシステムにしました。社会的協同組合では事業部門として地域社会の再生、景気回復、雇用率の向上、社会的サービスの提供といった公益事業を40%以上の割合で実施することになっています。社会的企業として認められるためには10%の違いですが、50%実施しなければなりません。社会的協同組合として認可を受けて、公益事業を10%以上の割合で実施できれば、社会的企業として申請するのに有利だと思います。協同組合基本法を施行する準備段階の間に、社会的協同組合および社会的企業の認可を支援する民間機関を作りました。

さらなる進化のために必要な制度の整備

このように制度を整理したからこそ、法人格を社会的企業から協同組合または社会的協同組合に移行する動きがいろいろとでてきました。私共では、切り替えをしようとしたいくつかの協同組合のコンサルティングをしましたが、京畿道にある従業員150人のある社会的企業、また、従業員200人の社会福祉事業団も社会的協同組合に移行する作業を進めています。仕事帰りに友達同士でお酒を飲みながら自分たちも協同組合を作ってみようかという話がよく話題になっているようで、毎月300件くらいのペースで協同組合ができています。

協同組合を作りたかったのに制度がなくて仕方なく株式会社にして成功した既存の企業も、協同組合に移行する事例も出てきています。二つの代表的な例を上げますと、一つはハッピーブリッジという外食フランチャイズの会社です。いったんハッピーブリッジ本社を労働者協同組合に移行してみて、もし労働者協同組合として成果があがれば、定期的に500の加盟店も社会的協同組合に移行することを考えています。地域農協ネットワークという韓国の最高の農業専門コンサルティング会社がありますが、ここで働いている50人の従業員も労働者協同組合に転換して、今、創立総会を準備しています。

資本主義社会では、株式会社の方が協同組合企業よりもはるかに運営しやすい環境にあると言わざるを得ませんが、教育の問題や、金融機関、また人的資源の生産など、様々な制度に関心を持ち、一つ一つを修正していこうとしています。最も問題なのは金融機関ですが、株式会社として運営しながら単に法人格を協同組合に変更すると、韓国の金融機関では融資限度額が半分に下がってしまうので問題になります。そして、教育の問題も非常に重要で、良い人材が継続していてこそ発展があるのだと思います。小・中・高等学校の12年間、経済というのは利己的な人々が自分の利益を最大化させるためのものであると詰め込み式に学びます。ですから、ビジネス上の制度も修正を必要とする部分がありますが、特に金融と教育に関しては、すべての協同組合関係者が力を合わせて迅速に修正しようと一生懸命努力をしています。基本的に制度を整備する路線でいくかどうかは韓国の協同組合陣営全体として協議しているところで、個々の協同組合のサポートの追加支援よりも制度的に不利な点がないように整備する必要があると我々は主張しています。ソウル市の協同組合政策や、他の道、市や郡レベルでも制度の整備が行われているほか、政府にも協同組合担当部署ができ、政府でも制度改善のための動きが加速しています。民間と行政、政治家が継続的に協力しながら、できるだけ早く制度の改善を行えるような努力が行われています。

日本では協同組合法がまだ成立していませんが、国民のために力を尽くそうという気持ちは韓国でも日本でも変わらないはずです。草の根運動を国家発展のためにどう結びつけていくかというのが課題です。韓国の場合は、ダイナミック・コリアと言われるほど、何かイシューがあれば皆が盛り上がり、法律の制定のために市民団体が中心となって連携する動きが活発です。日本でも政治と市民社会が協力しあい、協同組合法の制定のためにより現実的な戦略をたてる必要があるでしょう。

お話:キム・ギテ <韓国・協同組合研究所所長>
(2013年7月13日、東京・生活クラブ館にて)

編集:日本希望製作所事務局  協力:イェ・ウンジ(コリ・チーム)

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