8月 012013
 

“インディアンは馬に乗って走っても、一度立ち止まって
振り返る習慣を持っています。馬に乗って速く走り過ぎて、
自分の魂がついてこられないかもしれないということが心配で、
魂がちゃんとついてきていることを確認するためだといいます。”

都市で生きていく私たちも、もしかすると前だけを見て走って、自分の周辺、そして自分さえも省みることができないのではないかと心配したりします。せわしない現代人の生活の中でもスピードを少し遅らせてゆとりをもって生きていこうとする人たちのことをスロビーズ(Slobbies)と呼びます。そして、弘大(ホンデ)には、こうした人々の穏やかな響きを作っていくコミュニティカフェ<スロービー>があります。最近、<スロービー>は、より自然に近く地域に密着したコミュニティカフェを作るために、済州(チェジュ)に<スロービー>をオープンしました。

第6回社会経済「希望の種インタビュー」は、“しばらく立ち止まって人々を省みるスペース、コミュニティカフェ<スロービー>”のハン・ヨンミ代表です。

希望製作所(以下“希望”):こんにちは、ハン・ヨンミ代表。簡単な自己紹介をお願いします。

ハン・ヨンミ(以下“グレース”):私は1999年に<ハジャセンター>で仕事を始めました。<ハジャセンター>では、若者が経験を通じて適性に合った進路を見つけることができるように職業体験プロジェクトを運営しました。職業体験プログラムは、若者たちが直接体験することができるデザイン、音楽、映像、料理など様々なプログラムで構成されていて、中長期創業実験プロジェクトを実施しました。このような実験を繰り返すにつれ、人々が社会に出ても<ハジャセンター>で培った経験をもとに、持続可能な生活を送ることができるようにすべきだという必要性を感じました。

<ハジャセンター>で青少年の教育を進めながら、一般的な青少年を対象とした教育事業ではなく、脆弱層の若者たちのように、実際に支援が必要な青少年を対象に教育をしてみたいと思いました。特に、社会的な関心と支援が必要な若者が進路を見つけて自立に成功するようにしてあげたいという思いで、料理を通じた若者の成長と自立を支援するための社会的企業に関心を持ち、2007年<オーガニゼーション料理(以下“オヨリ”)>を始めました。

“食べていく技術さえあれば、青少年が自立することができますか?
彼らには技術だけでなく、いつでも戻ることができるような
拠り所となる場所が必要です。”

希望:青少年の成長と自立を支援するためにどんなことをしていますか?

グレース:実際には、いろいろな専門学校の自立支援団体などのように、若者の職業教育機関は国内にもたくさんあります。しかし、果たして若者たちが生活できる技術があれば、持続可能な暮らしをして自立することができるでしょうか?現実はそれほど甘くはありません。いったんこの若者たちが職業教育機関で教育を修了すると、彼らは100%就職に成功することができますが、彼らは職場の文化に適応できず、大部分は6か月が過ぎると仕事を中断して、短期アルバイトや仕事を転々とするようになります。そして再び”脱学校非活動”という無重力状態に陥ることになります。これは、青少年たちに技術を教えるだけでは、本当の意味での”自立”を助けることができないということを意味します。若者の真の“自立”のために“自分の生活を支えることができるようするための基礎”が必要です。社会の中に“一人”で存在することが自立ではなく、“共に”存在することが真の自立だからです。<オヨリ>を始めたときからまさにそのような“コミュニティ”の役割を目指しています。

そのコミュニティを作る媒体がまさに料理です。料理は、若者の自立と生活を支えることができるコミュニティを作るのに魅力的なビジネスアイテムだといえます。なぜなら、一つに、若者たちが人々を健康にする食べ物を作るシェフという職業意識を持って自立に成功すると、どんなことでもできるプロになれるという信念があったからです。料理を学びながら、人々を健康にすることで自分の心も健康になるわけです。二つ目の理由は、料理を通じてつくられる”食卓”があるからです。食卓は人々を集めて向かい合って座らせます。コミュニティを作る基盤ができるというわけです。

<オヨリ>を始めた時からコミュニティを作るための努力をしました。その最初の試みが、若者のシェフを養成する<ヤングシェフスクール>でした。<ヤングシェフスクール>は、1期10人前後で募集して通常6人前後のヤングシェフが卒業をして社会に出るようになります。ヤングシェフは、“共に”存在するコミュニティが必要であるという信念のもとに、料理だけでなく、考えて悩むことができる力を養うことができる料理人文学、基本的な経営教育を受けます。そして、ある程度の能力が養われると<スロービー>の現場でインターンをして実戦経験を積んでいきます。この過程を経て<ヤングシェフスクール>の3期卒業生2人が、今回新たにオープンした<済州スロービー>で仕事をすることになったわけです。種が芽を出しはじめ、徐々にコミュニティ会社という実として成長しているという気がします。

しかし、最初からコミュニティを作るための努力が順調にいっていたわけではありませんでした。外食業は、厳しい労働のわりに収入が低いという面があり、<オヨリ>も他の初期の創業企業と同様に、資金繰りに余裕がありませんでした。そんな中、2010年に<愛の実>脆弱層青少年インターンシッププログラム支援事業に選定され、青少年を対象に、<ヤングシェフスクール>を開始することができましたが、それも1年後に支援が途絶えてしまいました。

<ヤングシェフスクール>は、長期的に青少年一人一人を成長させるプログラムですが、支援根拠となる短期評価では、これを計ることができないという理由からでした。だからといって<ヤングシェフスクール>をやめる訳にはいきませんでした。<ヤングシェフスクール>は、若者の自立を支援する<オヨリ>の最も優先されるべき目的事業だったからです。ですから、何とか<ヤングシェフスクール>を維持するために努力しましたし、今では<ヤングシェフスクール>が<スロービー>で働くシェフを堂々と輩出しています。今回新たにオープンした<済州スロービー>のシェフ2人も<ヤングシェフスクール>3期の卒業生です。

結局、<オヨリ>から開始されたコミュニティ形成への取り組みをより積極的に実現してみようと<スロービー>をオープンしました。

“ソーシャルフランチャイズは、
<スロービー>のミッションを実現するためのもう一つの試みです。”

希望: <スロービー>が目指す価値を見ると、何よりもコミュニティ形成が重要なようです。スロービーが追求するコミュニティとはどういうものですか?

グレース: 昔は、家族という “血縁共同体”がまさに“コミュニティ”でした。しかし、時代とともに徐々に共同体という概念も変わってきました。私は、今の時代に合った新しい”家族共同体”を作ることが、コミュニティを作ることだと思います。これが<スロービー>が夢みるコミュニティ企業という概念です。血縁に基づく家族共同体ではなく、職場でありながら、他の人と意思疎通し共感する新しいコンセプトの”家族共同体”が、まさに<スロービー>のビジョンです。そして、このビジョンは、私たちが目指すコミュニティだと言えます。このビジョンを達成するために、<弘大スロービー>、<済州スロービー>、<城北スロービー>などが自然に作られたわけです。

<弘大スロービー>のスペースを見ると、コミュニティ企業というビジョンが盛り込まれています。入口を入るとすぐ左側にエコショップがあります。他の社会的企業も共に成長できるようにコミュニティで生産された製品をささやかに陳列したものです。そして、みんなで和気あいあいと話をしながら料理を作ることができるコミュニティキッチン、建物に面した広々としたベランダ菜園があります。スペース一つ一つが<スロービー>が夢みるコミュニティのために存在しているわけです。

<スロービー>では、このベースを拡大させるために “オーライトテーブル”というワークショップを通じて、人々が話して食べ物を分かち合う共同の食卓を設けています。特に、昨年6月からは<スロービー>のミッションのように人々が成長し、環境を守り、共に行動する店の連帯である“ハムケカゲ(共にある店)”と“ハムケデイ(共にある日)”を行っています。その他にも、多様なコミュニティの集まりを主催しています。

希望:<スロービー>のミッションとビジョンを広めるためには何よりもコミュニティを拡散することが重要です。どのようにして、様々な<スロービー>のコミュニティを広めたらよいでしょうか?

グレース: 外食業の社会的企業は、ビジネスを拡大するためにある段階でフランチャイズを導入するか否かを悩み始めます。そして、その悩みの中に<スロービー>の価値を盛り込んだわけです。<スロービー>は、社会的価値を創出する社会的企業であるからこそ、<スロービー>のミッションと社会的価値を盛り込むことができるフランチャイズ方式を考え始めました。そして、その方法は、“ソーシャルフランチャイジング”です。

“ソーシャルフランチャイジング” については、<オヨリ>を始めたときから悩み始めました。しかし、“ソーシャルフランチャイジング”を作るということは思ったよりも大変でした。まず、加盟店も私たちのミッションを共有するもう一人の社会的企業家(メインシェフ)が必要で、そのミッションとビジョンが実際の運営を通して実現されることが新たな問題でした。今回オープンした<済州スロービー>は、本当に幸運なケースです。<スロービー>のミッションに同意した人柄と能力を兼ね備えた立派なメインシェフに出会うことができたからこそ可能になったのでした。

<スロービー>が追求する“ソーシャルフランチャイジング”は、一般的なフランチャイズビジネスとは異なります。<スロービー>の加盟店は、お金を稼ぐために店を開くのではなく、<スロービー>のミッションと価値に共感し、それを実現するために開店します。また、加盟店ごとに異なるコンセプトで人々を集めてコミュニティをつくっていきます。つまり、加盟店が開店するそれぞれの地域に合った文化やコンセプトを盛り込むことです。<弘大スロービー>は、“おうちごはん”というコンセプト、<済州スロービー>は “自然”と“地域特産物”というコンセプト、<城北スロービー>は “若さ”、“お弁当”という異なるコンセプトで作られました。こうなると、<スロービー>のミッションとビジョンは、同じブランドの下、人々の生活の中に広がることができると思います。

<済州スロービー>も、この原則に則ってオープンしました。特に、済州島でオープンすることにした理由は、最近、田舎をもたない都市生活の若者が多いですが、彼らに全く異なった環境と条件、そして人々と交流する経験をさせ、さらには地域共同体を作ってあげたかったからです。また、約3年間<スロービー>家族と毎週末ソウル近郊で畑仕事をしてみて反応が非常に良かったということもあります。自然と共に暮らしたい人たちの欲求も感じることができました。この経験が、ソウル以外の地域に<スロービー>をオープンするのに決定的な影響を及ぼしました。結局のところ、“済州”はより自然の近くにありながらも地域社会と密着していて、特に自然環境が魅力的であることから選ばれました。今年8月には<城北スロービー>がオープンする予定です。城北区は全国で学業中断青少年の割合が最も高いところでもあります。5月に<済州スロービー>をオープンし、続いて8月に<城北スロービー>まで、それぞれの地域の特性に合った形で<スロービー>が作られています。

希望: “フランチャイジング”を推進されているからには、内的には特有の組織文化があるように思われますが。

グレース: <スロービー>は、基本的に社会的企業です。一般的な外食産業と異なる点は、何よりも利益ではなく人間中心の職場だということです。そのため食材から組織文化まで、あらゆる意思決定の中心に人々とコミュニティが存在します。シェフという職業も初めて学ぶ際には厳しい徒弟制度を避けることができません。若者たちが中心になっている中、重要なのは水平的な文化の中でお互いに尊重し、配慮する文化を作ることだと思いました。ですから、“職場がすなわち学校だ”“階層より秩序”“指示よりも共感”という原則を作り、メンバーが一緒に守っています。この原則がつまり組織文化であるわけですから、何よりも立派なシェフを発掘することが重要になります。長期的には、<ヤングシェフスクール>卒業生がその原則を守っていくシェフとして育っていくことを望んでいます。

“地域の生態系と一緒につくっていく<済州スロービー>“

希望: オルタナティブな “ソーシャルフランチャイジング”のために<済州スロービー>の成功が何よりも重要なことです。<済州スロービー>についてもう少し詳しく教えてください。

グレース: <済州スロービー>は涯月(エウォル)里に位置しています。市内というよりも郊外にあります。初めに済州島エウォル里という場所を選ぶ際にはたくさん悩みました。済州市内に<済州スロービー>を作ることにしたなら、ソウルに作るのと違いがないと思いました。自然を中心とした小さな町を探している過程で、エウォル里を発見することになったわけです。村の住民の方々にも好意的に私たちの趣旨に同感してくださっています。何よりも<済州スロービー>周辺には、小学校から高校まで全てあります。地域コミュニティを作っていくという長期的な視点が融合したというわけです。

<済州スロービー>も、最初は<ソウルヤングシェフスクール>に基づいて開始する予定です。その後、地域の青少年のコミュニティのニーズが発生した場合に、済州島ならではの独自のプログラムを運営する計画です。実際に済州島の学校を対象にしたある調査では、料理教育と新たな進路志望について高いニーズを確認することができました。

<済州スロービー>は非常にいいスタートを切りました。顧客層が観光客や地元の人々に均等に分布しています。地域をベースに特産品を使ったメニューを開発したおかげです。特に、済州島の若いカップルは、ブログなどを見て直接訪ねてくることもあります。再訪率も高くなっています。

長期的には、済州島の地域の生態系と共に<スロービー>のミッションを実現する計画です。共に生きていく<スロービー>のコミュニティのように、<スロービー>という社会的企業も地域の団体と一緒に共存し、存在してこそより多くの社会的価値があるからです。現在は、<お姉さんの家庭菜園>、<済州エコツーリズム>などと事業連携を協議しています。また、<走る図書館>、<美しい青少年センター>、<木工図書館>、<お化け公園内の種籾学校>、<ピザ屋トルハルバン>など済州島の地域団体との交流を通して、若者の進路教育のための連帯組織を作ってみようという計画もあります。

希望: 最後に、社会的企業家を目指す方々に一言お願いします。

グレース: 一般的に、企業家は利益を創出します。しかし、社会的企業家は利益を得ながら社会的価値を創出します。最も重要なことは、お金を稼ぐということと良い仕事をするということが一致しなければならないということです。稼いだお金をいい使い道に別途使うのではなく、お金を稼ぐこと自体が社会のためになる有益な仕事でなければならないということです。このようなビジネスモデルが相互に有機的につながった循環する価値を創出することが重要です。そして共同の組織文化を作ることも忘れてはいけません。共通の価値観は一瞬にして作られるのではなく、一定の経験を通して作られます。常にこの点を忘れないで欲しいです。

希望: お忙しい中、長時間インタビューの時間を割いていただきありがとうございました。

グレース: ありがとうございました。

インタビュー・構成:イ・ジヘ、チョン・ジヨン(社会的経済センター嘱託研究員)

原文:韓国語 http://www.makehope.org/4648