10月 162013
 

9月9日、世田谷区の保坂展人区長、図書館、教育関係者が、ソウル市冠岳区の図書館を視察されました。今年の1月に、冠岳区の柳鍾珌(ユ・ジョンピル)区長と冠岳区の職員が東京の世田谷区、杉並区、横浜の関内フューチャーセンターなどを訪問したことは、すでにお伝えしましたが、今回の訪問は、その時の視察がきっかけとなったものです。冠岳区は、貧困地域への取り組みなどをはじめとした市民活動が盛んなところでもあり、またソウル大学があり、IT企業が多い九老デジタル団地や、江南区などの企業に通うにも比較的近いことから、ワンルームが多く、若い世代が多く住んでいる地域です。

柳鍾珌区長は、2007年の就任以来、歩いて10分の距離に図書館をつくる「小さな図書館運動」に力を注いできました。それは、「太陽の光は、誰もが平等に浴びることができるように、その子どもの家庭の経済状況の如何にかかわらず、誰もが等しく学ぶ機会が必要だ」という区長の強い主張から生まれた「知識の福祉」という政策に基づいています。昔国会図書館の館長を歴任し、自らも本をこよなく愛する区長が就任した当時は5館だった図書館が、現在では29館に増えました。

今回、世田谷区の新しい図書館政策の参考にするためにと、関係者の方々が視察をされました。見学先は、公園のなかのコンテナ図書館である「落星垈(ナクソンデ)公園図書館」、区の洞事務所のなかにつくられた、ボランティアで運営されている「宝島小さな図書館」、子どもの遊び場も一緒にある「本と遊びと図書館」、地下鉄ソウル大入口駅構内にある「ユビキタス図書館」、仕事に関連する図書が集められ、就職専門カウンセラーによる相談コーナーなどが設けられている「Job Oasis」、冠岳区庁舎の1階にある「龍を夢見る小さな図書館」などです。どの施設も、新たに建物を建ててつくられたものではなく、既存の建物の空きスペースを活用したもので、小さな規模ですが、そのことが、より、住民の暮らしのなかに「本」があることを感じてもらおうという、「小さな図書館」の目的を物語っています。

また、区内の社会的企業や市民活動関係者の要請により、「世田谷区のまちづくり」について、保坂区長の講演が、「平生教育センター」で行われ、住民たちと交流の時間を持たれました。まちづくりに対する関心も高く、参加者からは、熱心な質問が寄せられました。

冠岳区区庁舎の1階には、「Café More」という、視覚障害者の人がバリスタとしてコーヒーを提供してくれるカフェがあります。「龍を夢見る小さな図書館」では、コーヒーを飲みながら本を読めるようなスペースもありますし、区庁舎の食堂では、一般の人も4000ウォンで昼食が食べられます。ソウルを訪れたら、冠岳区に立ち寄り、少し違った観光を楽しんでみてはいかがでしょうか。   <桔川純子>