2月 202014
 

2013年11月5~7日の3日間、筆者はソウルに滞在して「国際社会的経済フォーラム(Global Social Economy Forum 2013、以下GSFE2013とする)」に参加した。このフォーラムは、各国の社会的経済活動の実践報告や研究者の分析を通して、社会的経済とは何か、人間を大切にした経済活動の新しい流れをつくるために「社会的経済」がどのように役立つことができるのかを話し合う場であった。ソウル市がホストとして参加した非常に大きなフォーラムであり、このこと自体が韓国において社会的経済が大きく注目されていることの証左でもあった。

現代韓国において、経済構造問題・労働問題などがホットイシューとなって久しいが、GSFE2013が開かれたのはこのような雰囲気と無関係ではないだろう。

*社会的企業大集合!
フォーラムが開かれている間、ソウル市庁の地下1階に社会的企業・社会的経済を実践する団体が集まり、それぞれの活動を紹介するブースを設置した。よく知られている老舗の「BIG ISSUE」などや、現在流行している「カーシェアリング」を社会的企業として運営している、クッキーやコーヒー、紅茶などの菓子や茶類を販売している社会的企業など多種多様であった。
筆者は時間の関係上すべてを詳細に覗けたわけではなかったが、その中でも印象に残ったものをいくつか紹介したい。
まずはゲーム会社ACTUSである。「レッツ、コープ(Let’s COOP)」という、分かち合い協力しあうことで勝者となるボードゲームを開発した。協同組合とは何かをゲームを通して学ぶことができる。詳細はwww.actus.kr/letscoop(韓国語)を参照願いたい。

このゲームを開発したACTUSのホン・ソンホ主席研究員は、「普通、勝敗をつけるゲームは相手をやっつけるとか相手より金を稼ぐなどがルールとなる。しかし、私たちが開発したゲームは、そのような価値観に基づいたルールではなく、協力と交渉によって一緒に目標を達成することが目標となるゲームだ。ゲームを通して、協同組合の価値観や原則を楽しく学ぶことがよいと思った」「私たちはもともとはオンラインゲームを開発している会社だ。しかし、協同組合を素材にした場合、オンラインゲームよりボードゲームのほうがよりマッチすると思った。結果は思った通りだった」と話した。

「レッツ、コープ(Let’s COOP)」に興味を示す人たち

 もう一つは「本の農場(Book Form)」。子どもたちに本を読む空間を提供する会社だ。
ブースにいたスタッフは、「親たちは子どもが本を読ませる。しかし、ただ読ませるだけでは習慣化しない。ではどうするか?子どもたちは、自分のサイズに合わせた空間にこもるのが好きだ。こもって本を読んだりする。この空間を提供するのが『本の農場』だ。子どもに自分だけの『本のテント』という”秘密基地”を提供するのだ」「小さい子たちは壁に絵を描くのが好きだ。しかし、家の壁に絵を描かれるとそれを掃除する親は大変だ。自由に描かせてあげたいが、そうはいかないという葛藤が生じる。ここで『本のテント』の登場だ。紙素材なので、自由に描いても問題ない。むしろ、自分だけの空間をつくる楽しみを感じるかもしれない」と話した。大企業がなかなか思いつかない、思いついてもすぐに商品化できないものを社会的企業は商品化し、問題を解決する。
「本の農場」の詳細については、次のURLを参照されたい。 http://webookfarm.com/

教室で探す希望」というメッセージボードを持ってパフォーマンスするエラウエード・コリアのメンバー


三つ目は、「エラウエード・コリア」(www.aarrowads.co.kr)。サインスピニングというパフォーマンスをするグループである。サインスピニングは「国際的に広く普及している、ひとつのエクストリームスポーツであり、パフォーマンス型屋外広告技法です」(「エラウエド・コリア」の説明)。元々は米国で発生したパフォーマンスだ。180cm×50cmのサインボードを使ってパフォーマンスをしながら、サインボードに書いてある広告や主張に観客の目を引き付けさせる。以下のサイトで、エラウエード・コリアの実力を確認されたい。

エラウエード・コリアの紹介ページ(動画)  http://www.youtube.com/user/SPINNERLIFE

この団体、一見、一般的な社会的企業のイメージからは遠いように見える。しかし驚くなかれ、立派なビジョンを持っているのだ。エラウエード・コリアのブロッシャーによると「青年および青少年のために健全な働き口をつくる」と「才能を社会に寄付することを通して、地域社会に貢献する」というのがビジョンであり、「このようなビジョンの下に、地域福祉団、救世軍、非営利団体などのために才能寄付をしており、これを通して、企業の社会的価値を実現しています」とある。

「倫理的ファションネットワーク」のブース


「才能寄付(재능기부)」とは、今の韓国を読み解くキーワードの一つで「自分の持っている才能を具体的な行動を通して社会のために役立てる」という趣旨を意味する。エラウエード・コリアは、サイドスピニングを通して社会的メッセージを人々に伝えることをミッションの一つにしているということが分かった。

その他、たくさんの社会的企業がブースを出して参加した。ファッション分野において、生産過程の倫理的処置、エコウェディング、再利用などを通して社会的価値を追求する「倫理的ファションネットワーク」(GSEFでの紹介ページ http://www.gsef2013.org/session/kr_session_1_5.asp?sMenu=sse1)や、倫理的な消費の実現を目標にするネットワーク組織「結びつき」などがあった。

ネットワーク「結びつき」に参加している社会的企業(お茶や軽食を販売)


ハンギョレ経済研究所のチョ・ヒョンギョン主任研究員は「韓国では、2007年に社会的企業育成法が施行された後、さまざまな社会的企業が誕生し活動している。経営がうまく行われているところもあれば、軌道に載せるために四苦八苦している企業も少なくない」と話した。

文: 森類臣 (Tomoomi Mori) / 立命館大学コリア研究センター専任研究員

    
【レポート】 アジア発「社会的経済」紀行~最新のトレンド発信基地ソウルから(2)~