3月 202014
 

* 国際社会的経済フォーラム(2013年11月5~7日於ソウル)
で行われたセッションの様子

今回のフォーラムでは、11月6日に17のセッション、7日には11のセッションが行われた。参加者は、各自関心のあるセッションに参加する形式であり、それぞれのセッションでは参加者が積極的に発言した。国際フォーラムであったため、海外からの参加者が多かったのも本フォーラムの特徴であっただろう。
フォーラムの紹介やどのようなセッションがあったかの説明は、GSEFのホームページに詳しい(http://www.gsef2013.org/gsef/gsef_2.asp?sMenu=gse2)。
 
ここでは、筆者が参加したセッションを2つ紹介したい。

セッション紹介① 「東京大都市圏においての都市農業の商品化と持続性」

 このセッションは、6日の午後3時~4時半の1時間半に行われた。首都大学東京の菊池俊夫教授(理学博士)が問題提起した。菊池教授は「都市農業の再編の基本的な哲学にはruralityの持続性がある」とした上で「ruralityとは生態的基盤(地域の自然環境、土地基盤、土地条件、農地)、経済的基盤(農業生産、農業的土地利用)、社会的基盤(コミュニティ、生活組織)の有機的な関係によって成立している」とした。菊池教授は「都市農業の再編パターン」「農村空間の商品化」「農業活動の商業化」「農産物の商品化」などの概念を事例を交えて話した。地域により特性がある都市農業のケースとして、練馬大根・京野菜・吹田くわいなどを挙げた。また、最近の傾向として、若い人が農業に参入、就農する事例を挙げた。

セッションに参加した地域ファシリテーターで研究者のカン・ネヨンさんは「韓国では、例えばソウル江東区では屋上庭園などがコミュニティーの場として機能している」とコメントした。

菊池教授の報告が終わった後は、会場の参加者がそれぞれ10人ほどの小グループに分かれて、菊池教授の問題提起を示唆としてそれぞれが取り組んでいる社会的企業の課題を話し合った。日本から参加したある研究者は、「都市農業のことを議論するときには、農村の日韓比較も念頭にいれなければならないのではないか。社会問題をどう解決するかという点では日韓は似ている部分もあるが違う点もある。韓国は制度で引っ張っている。日本は制度作りが比較的弱い」とコメントした。

セッション紹介②~「Breakout Session 16 営利と非営利の協力を通してみる社会的企業」

このセッションは、7日の午後3時半~午後5時の1時間半に行われた。立命館大学産業社会学部所属で立命館大学コリア研究センター(以下、RiCKS)メンバーの秋葉武准教授、聖公会大学社会的企業研究センターのキム・ソンギ教授が発表者として参加した。立命館大学国際関係学部所属でRiCKS副センター長の文京洙教授およびハンギョレ経済研究所のイ・ヒョンスク所長はコメンテーターとして参加した。筆者は、このセッションの運営者の一人として参加した。

まず、秋葉准教授が日本における企業の社会貢献活動モデルを紹介した。秋葉教授は、「最近、資金的支援ではないNPO、NGOの組織基盤強化への支援が注目を受けている」とし、その前提として、2000年代前半を境にして、①寄付金や会員の減少②組織基盤とマネージ面との弱化が出てきたことなどを挙げた。秋葉准教授は、NGO・NPOと企業の連携の例として、パナソニックNPOサポートファンドや山梨県の環境NGO「スペースふう」に言及し、NPOサポートファンドの成果として、長期的プログラムを通してNGOの経営に役立ち企業のマネジメントスキルも習得することが可能となることを指摘した。

キム・ソンギ教授の専門は協同組合研究であり、実践家でもある。キム教授は、地域社会に基盤を置く社会的企業が率いる協力方案について発表した。キム教授は「地域社会は、社会的イシューの解決策を準備し一般的な社会組織が存在する土台になることが大事な点だ。同時に、社会的企業の発展のために普遍的なモデルが地域社会を基盤としていることも重要だ」とした上で「今まで、社会的企業と通常企業の協力というと、通常企業が社会的企業をリードしてきた。しかし、これからは社会的企業が通常企業を主導するために、発想を変えなければならない」とした。キム教授は、社会的企業と他企業の協力モデルとして、ソウル城北区の事例を挙げた。

この後、文京洙教授とイ・ヒョンスク所長が、日韓比較の視点から秋葉准教授とキム・ソンギ教授の発表にコメントをした。また、会場からも発表者・コメンテーターに対して質問が多数あった。

* 社会的経済の潮流はソウルから始まる~「ソウル宣言文」採択

最終日である7日には、ソウル市庁8階のホールでラウンドテーブルによるディスカッションが行われた。元ハンギョレ経済研究所所長で、2012年の大統領選挙のときに安哲秀陣営の経済政策担当として参与した李ウォンジェ氏が議長を務めた。朴元淳市長はホスト側の一人として挨拶をした。

ディスカッションには、多様なグループの代表者が参加した。行政体としては、韓国のソウル市およびソウル市社会的経済支援センター、イタリアからはボローニャ市とエミリア・ローマニャ州政府、日本からは京都市と横浜市、カナダからはモントリオール市とケベック市、フィリピンからはケェゾン市が参加した。NGO、NPOを含めた各種団体は、ローカリティ―(locality、英)、シャンティエ(Chantier de l’economie sociate、カナダ)香港社会サービス連合会(HKCSS、香港)、ソーシャルトレイダース(Social Traders、豪)、アジアベンチャー寄付ネットワーク(The Asia Venture Philanthropy Network、アジア太平洋地区)などが参加した。

このディスカッションでは、各行政機関、団体が自分たちの取り組みを紹介しつつ隣人の意見を聞き合い、ビジョンを共有しようとするものだった。そのビジョンの中で今回最も注目されるのは「ソウル宣言文」であろう。ディスカッションの最後には「ソウル宣言文」が、参加者の承認により採択された。

「ソウル宣言文」は、近年の経済危機の原因は、市場原理に対する過度の依存および規則のない金融グローバリズムの結果が招いたことだとし、社会的経済運動が、経済の両極化、社会的不平等と排除、生態問題を解決できる新しい希望と見た上で、「よりよい経済」「よりよい暮らし」を実現するために、社会的経済の重要性を述べている。

このような問題意識の上に、10項目にわたる方向性を提示した。少し長くなるが、その内容を紹介したい。

1. 各地方自治体は、公共・民間・共同体パートナーシップを通して、持続可能な社会的経済ネットワークを構築し、主要社会的経済の主体間の交流・協力を促進する。

2. 私たちは皆、市民権限の重要性を認め、各社会的経済の多様で広範囲の共同体リーダーシップを支持する。

3. 私たちは皆、社会的経済に対する認識を高揚させて、相違する集団のために適切な学習プログラムを開発し、その成果を相互共有する。

4. 私たちは皆、社会的経済を振興するために、標準的な教科書と市民教育プログラムを共同開発する。このような努力は市民社会の影響力と力量を増進させる。

5. 私たちは皆、社会革新のために、私たちの経験とビジョンを共有し、人的資源の育成のために都市間の社会的経済人的交流プログラムを積極運営する。

6. 私たちは皆、リアルタイムでインターネットおよびその他の疎通手段を通して、社会的経済関連情報を交換し、社会的経済の新しい研究成果を討論して共有する。各都市政府はこのような情報に立脚して政策を随時に調整するように努力する。

7. 私たちは皆、社会的経済と市場経済、公共経済が調和を成す発展モデルを開発する。政府の公共政策によってこのような目的が達成なされなければならない。

8. 私たちは皆、社会的経済連合体と社会的経済支援組織を形成する努力を積極支持し、このような組織が、社会的経済活動の方向を決定し共同プロジェクトを促進することにおいて決定的役割を担う点を深く認識する。

9. 私たちは皆、深刻な低開発と貧困問題を経験している開発途上国に対する責任意識を共感し、社会的経済を通して貧困国家の経済、社会、文化、環境に対する統合的接近を通した解決方式を模索する。

10. 私たちは皆、社会的経済のグローバル共同行動を促進し、社会的経済の運営と発展のためのグローバル協議体形成を支援する。女性団体と労働団体、環境団体などや社会的経済運動のような運動もこのような過程に一緒に参与する。

(ちなみに、「ソウル宣言」については、マスメディアの『中央日報』やインターネット新聞の『NEWSis』などが詳細を報じている。詳細は以下を参照されたい。)

『中央日報』(韓国語)
http://money.joins.com/news/article/article.asp?total_id=13072721&ctg=1213

『NEWSis』(韓国語)
http://www.newsis.com/ar_detail/view.html?ar_id=NISX20131107_0012494834&cID=10304&pID=10300

主催者によると、国際社会的経済フォーラムはずっとソウルでやるのではなく、第2回目からは韓国以外の都市でやりたいということであった。社会的経済の国際連帯を目指すにはそのほうが自然なのだろう。筆者も賛成である。

新資本主義経済と国際金融に対するオルタナティブな動きとして社会的経済がどのような役割を果たすのであろうか。今回のフォーラム参加でその一端が垣間見えた気がする。概念整備・実効性の検証などはこれからの課題かもしれないが、すでに実践されている社会的経済活動の「世の中をより良く変える力」に注目・期待したい。

文: 森類臣 (Tomoomi Mori) / 立命館大学コリア研究センター専任研究員

【レポート】 アジア発「社会的経済」紀行~最新のトレンド発信基地ソウルから(1)~