5月 282014
 

4月17日から20日まで、「住居権を実現する国民連合(住居連合)」の方たちの視察がありました。住居連合は、ビニールハウス、チョッパン(ドヤ)などの貧困地域に居住する人々が中心の市民団体です。人権を担保するという観点から、積極的にオルタナティブな提案をしています。住居連合は、アジアのスラム街の、当事者の手によるコーポラティブ住宅の事例にならって、韓国でも同様の試みをしようと、アジアの人々とのネットワークをつくりながら精力的に取り組んでいます。

今回、NPO法人自立センターふるさとの会、NPO法人コーポラティブハウス推進協議会、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、自由と生存の家を訪問したほか、社会的企業研究会で、韓国のハウジングプアの現状と取り組みについての報告を行いました。また、1年の半分は世界のスラム街を訪れ、貧困地域の人々に寄り添ってこられたイエズス会の司祭で、1994年にマグサイサイ賞国際理解部門賞を受賞されたホルヘ・アンソレーナ神父と面談し、意見交換を行いました。

社会的企業研究会およびNPO法人自立生活サポートセンター・もやいへの訪問に同行した、東洋大学 大学院生の貝吹一成さんのレポートです。

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2014年4月18日(金) 18:30~20:30 in 明治大学 グローバルフロント2階
テーマ: 「韓国のハウジングプアの現状と協働的な取り組み―住居権実現のための国民連合の活動」
報告者: ノ・ギドク(住居権を実現する国民連合事務総長)
      ナ・ヒョウ(Asian Bridge運営委員)

今回行われたシンポジウムにおいて、ノ・ギドクさんからは、当事者の目線から韓国における住居権に関する現状を統計資料や写真を用いた報告がされ、ナ・ヒョウさんからはACHRがどのような過程を経て結成され、また近年行っている活動についてミャンマーのワークショップを例に報告されていた。

1980年代、当時の韓国政府は1988年に行われるソウルオリンピックに向け、ビニールハウスなどに居住する人びとが集まっている貧困地域から住居を強制撤去する動きが活発化した。このことがきっかけになり、住居を失った人々は「住居権は保障されるべき」という目的を掲げ、当事者自らが運動を行ってきている。具体的な目標として、安定した住居を確保できるように法整備を行うこと、低所得者へ広く社会保障を実現することなどを掲げている。単に声を上げて運動するのではなく、当事者自らが具体的な法律や政策を提案するため、当事者への教育活動に力を入れている。近年では、この活動の影響からか、強制撤去は減少してきている。しかし、未だソウル市内だけでも30箇所、約15,000人がビニールハウスに居住している現状がある。

韓国で行われた強制撤去は、当時アジア各国で行われていた。経済発展が進む中で、都市から貧困地域を無くすことを政府が掲げていたからである。これらの現状に対して、当事者自らが運動を進めていくため、ACHRはアジア各国とのネットワークのつながりを重要視している。ミャンマーでのワークショップでは、どのような住宅で暮らしたいのか、暮らすためにはどのような材料が必要なのかを住民自ら具体的なプランを考え、発表する。このような活動が当事者である住民の主体性につながるという。

私はノ・ギドクさんとナ・ヒョウさんの報告を聞き、当事者自らが考え行動する重要性を再認識した。日本でも貧困者への社会保障および支援の少なさを改善するため、運動やデモは日常的に行われている。しかし、活動の中心にいる人びとは、どの程度が当事者なのであろうか。支援する人が決して悪いわけではない。ただ、経験してきた当事者の価値観と経験していない人の価値観では、必然的に意識や考えに差があるのではないだろうか。当事者自らが声を上げ、自らが経験してきたことを糧に活動する人たちの言葉には重みがあるように感じた。

2014年4月19日(土) 10:00~12:00
訪問先:NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(飯田橋)
      稲葉剛さん、坂庭さん、松山さん

今回お話を伺った自立生活サポートセンターもやいは、2001年に開設された。もやいは、路上生活者が就職できても、住まいを探す際に連帯保証人が見つからない人々への支援、入居支援事業を中心に行っている。現在では、その他に生活相談、交流事業、広報・啓発事業なども行っている。

日本は、住まいを契約する際に一般的に連帯保証人が必要になる。親族をはじめ、居住者の身近にいる人にお願いすることが多いが、特に路上生活者には身寄りが少なく、連帯保証人になってくれる人を探すことが難しい。そのためにもやいが行っている入居者支援はとても重要であり、路上生活者の社会復帰には必要不可欠な支援であることを実感した。住まい以外にも、就職した際や奨学金を借りる際など、日本には保証人をたてる場面が多い。これまで私は、奨学金をはじめとした書類を申請する際にこの保証人制度を当たり前であるという感覚が強かった。しかし、もやいの支援を知ることで、この当たり前の感覚を持っていた自分自身が保証人制度の問題点を見過ごしていたことに気がついた。保証人制度は住まいを得たいが保証人をたてられない人々にとって、大きな壁として立ちはだかっている。この問題は、今後考えていかなくてはいけない。

また近年問題になっている脱法ハウスからの強制立ち退きについても話を伺うことができた。脱法ハウスは、金銭的に安く、入居までが比較的厳しくないため、多くの貧困者が住んでいる。しかし、この脱法ハウスは、国の建築基準法を満たしていない建物もしくは構造が多く、建物からの強制立ち退きなど、取り締まりが厳しくなってきている。この立ち退き命令は、居住する人々にとって、住まいがなくなり、死活問題になる。そのため、もやいは立ち退きまでの期間の延期や、居住者の次の住まい探しを支援した。だが、他の住まいに移れても上手く馴染めず、新しい住まいでの生活が続けられない新たな問題があるという。単に住まいを提供するだけでなく、彼らが参加し続け、生きていくうえで支えとなるコミュニティ形成やその維持を重視する必要があることを指摘していた。この問題への取り組みの一つとして、もやいでは交流事業を行っている。実際にもやいの事務所の近くにある交流サロン「サロンド・カフェ こもれび」を見学させてもらったが、多くの人々が集まっており、笑顔が絶えない場所であった。このような交流サロンは、住んでいる場所のコミュニティになかなか参加できない人にとって、大切な居場所になると感じた。

もやいの支援活動を知ることで、日本における貧困者の社会復帰への現状と問題、その構造についても少なからず理解することができた。これらの問題は単独で存在しているのではなく、さまざまな問題とも繋がっている。ある問題を解決する際に、関連する他の問題とも同時並行して考えていくことが、日本の社会問題を減らしていくために大切であると考える。またそのためには、もやいをはじめとする支援事業・活動が重要な役割を果たすことを再認識した。

今回のもやい訪問の最後に、韓国で住居権実現のために活動するメンバーの一人が、「衣・食・住は人間の基本的人権であり、住まいがないことは自己責任でないことをもっと強調してほしい」と訴えていた。韓国語で話す彼の言葉の内容を通訳されるまで私はわからなかったが、力強い言葉で懸命に訴えていた彼の姿は印象深く、言葉の内容とともに今後忘れてはいけないと強く感じた。

文: 貝吹一成/東洋大学大学院生

ノ・ギドク 住居権を実現する国民連合事務総長
「伝えるべき住居安定」(世界日報記事)