12月 172014
 

hyoshi_ima
子どもの未来社ブックレット
『いま、話したいこと~東アジアの若者たちの歴史対話と交流』
室田元美 著
定価 800円+税
発行 子どもの未来社(TEL 03-3511-7433)

*全国の書店、アマゾンでも、注文・購入できます。

 大学で仕事をしていると、若い人たちのしなやかさに心が洗われる思いを抱くことが少なからずあります。とりわけ、社会とまっすぐに向き合う若者たちの姿には、未来を変えうる確かな力を感じます。

 本書『いま、話したいこと~東アジアの若者たちの歴史対話と交流~』は、次世代を担う若者たちへの期待を新たにしてくれた一冊です。著者の室田元美氏は、「旅好き、歴史好きのルポライター」。「親世代がかろうじて戦争を知っているため、10年ほど前から戦争体験を… 次世代にきちんと伝え残したいと、取材を重ねてきた」(p.3)という著者が、日本・韓国・中国の若者たちによる4つの交流を取材してまとめたのが、本著です。いずれの取り組みからも、国家間では硬直している歴史認識の問題をよそに、互いに学び合おうとする東アジアの若者たちの息吹が伝わってきます。

 第一の取り組みは、日中韓の中高生による「東アジア青少年歴史体験キャンプ」。毎年夏に開催されるこのキャンプは、すでに10年以上続いているそうです。互いの国の戦争関連地を訪れ、歴史を学び、語り合う催しです。著者が取材した2013年度の京都キャンプでは、約120の参加者が、京都府北部の舞鶴や大江山を訪ねて、戦時に朝鮮半島や中国から強制連行され、労働を強いられた人々の歴史と、こうした歴史を風化させないための、地元の取り組みを学びました。地元の人々は、故郷を離れて眠る労働者たちの追悼碑を建て、毎年追悼式典を行うことで記憶を継承してきたのです。「教科書に書かれない歴史」に気づき、それを咀嚼した上で、感想をことばにして披露し合う—日中韓の若者たちが、お仕着せでない歴史を体験し、そこから学ぶ様子が描かれています。

 第二の取り組みは、高知県西部の幡多地区で、地域に根ざした学びの場を提供する「幡多高校生ゼミナール」、通称「幡多ゼミ」です。1983年に地元の高校教師が立ち上げ、現在は地区の8高校が参加しているそうです。幡多ゼミでは、一年ごとに幡多と釜山を行き来して、高校生同士の交流を実施しています。東日本大震災から1年半近くが経過した2013年夏、広島で被爆した在韓被爆者を訪ね、韓国、古里(コリ)の原発を見学して、放射能について語り合う—ここにもまた、学校で教わらない歴史の発見がありました。

 三番目に紹介されるのは、北海道で戦時強制労働者の遺骨を発掘して故郷へ返す活動です。「東アジア共同ワークショップ」を担うのは、日本人、韓国人、在日コリアンの大学生たち。民族を超えた若者たちの共同作業は、毎年夏と冬の2回ずつ、16年以上にわたり続けられています。発掘した遺骨を供養し、身元を調べて、可能なかぎり遺族のもとに戻すという困難な作業に従事する仲間たちは、夜になると酒を酌み交わして、仕事や家族、恋人など、国を超えた若者たちに共通する話題で盛り上がるそうです。国境を超えた、確かな友情が育まれてきたにちがいありません。

 最後に紹介されるのは、NPO法人「ブリッジ・フォー・ピース」のユニークな取り組みです。ひとりの女性が立ち上げたというこの組織は、さまざまな活動をとおして、文字どおり「平和のための架け橋」になることを目指しています。たとえば、フィリピンと日本、先の大戦の被害者と加害者の双方の証言やメッセージをビデオに撮影して、相手に届けるプロジェクト。撮影したビデオを小学校から大学までの授業で上映して、戦争について考えてもらう「学校へ行こう!」プロジェクト。知らない者同士が抱き合って(ハグして)親愛の情を伝える「フリーハグ(free hug)」。それを、韓国ソウルの路上でおこなう日本の若者たち。若者らしい感性で、今できることを考えて実践していく、そんな彼ら/彼女らにたくましさを感じます。
 
本書で紹介された4つの取り組みから伝わってくるのは、実際に人と会って話すことの大切さです。インターネットが普及して、居ながらにして地球上の多くの人々とつながっている、そんな気持ちになっている時代だからこそ、顔を見交わせ、肩にふれ合う時間を共有することの意味は大きいのだと思います。 (大類久恵/津田塾大学教授)