4月 292015
 

ソンミサン学校「チョンセ」が上がってしまって、引っ越ししないといけなくなった。」

ソウルに行くと、最近そんな話をあちこちでよく聞くようになりました。「チョンセ」というのは、入居するときに、高額のお金を家主に預け、退去するときに全額返してもらうというシステムです。銀行の金利が高かった時代には、まとまったお金を銀行に預けておけば、家主は、利子を含めてかなりの金額を運営することができるようになります。問題は、韓国は家主の権利が強く、「チョンセ」を急にあげたりすることは日常茶飯事だということです。一般的に2年ごとに契約更新をしますが、その更新のとき、家主からいきなり「チョンセ」をあげる<通告>をされ、止むを得ず引っ越しすることも少なくはありません。今は、金利が低くなっているので、「チョンセ」から「ウォルセ(月極の家賃)」に切り替える家主も多くなっています。

チャグンナム日本からもたくさんの人が訪れる「ソンミサン・マウル」のコミュニティ・カフェ「チャグンナム(小さな木)」も、チョンセの値上げを通告され、引っ越しをせざるを得なくなったケースです。「チャグンナム」はマウル(韓国語でまち、村の意味)のなかで、住民たちの「出会いの場」「憩いの場」になっています。また、子どもたちは、親の帰りが遅いとき、あらかじめ親がカフェにプールしていたお金で、飲み物やおやつを注文したり、親が帰ってくるまで宿題をしたり本を読んだりして過ごしたりもしています。カフェでは顔見知りの大人が声をかけてくれたり、時には、「うちにおいで」と言ってくれたりする、いわば「セーフティネット」の役割を果たしているということもあり、どこに移転するのかは、住民にとっては死活問題といっても過言ではないかもしれません。それでも、家主の要求に従わざるを得ないが現状なのです。

コミュニティ・レストランの「ソンミサン パプサン(ソンミサンの食卓)」もチョンセの値上げを通告されたようですが、その値上げ要求には応じて、移転はしないことを決めたそうです。「そのお金があったら従業員に配分したかった」とオーナーが嘆いていたそうですが、2年という月日はあっという間に過ぎていきます。2年毎にこんな悩みに向き合わないといけないというのは、定住しようというときに大きなハードルになります。

ソウルをはじめとして「まちづくり」が大きなうねりとなって広がっています。しかし大都市では、住民たちが手塩にかけてコミュニティでの暮らしを育んでいったとしても、「あそこはどうも暮らしやすいまちらしい」という噂が広がると、経済的に余裕のある人たちが投機のためにこぞって土地やビルを購入してしまい、その結果、それまで要となっていた住民たちが暮らせなくなってしまうという矛盾が起こってきています。

2月の末に参与連帯の友人とそんな話をしていたら、「法律を決める議員とか大学の先生とかは、家主の方だったりするから、なかなか対策が進んでいかない」と嘆いていました。

最近では、ソウル市が、ソウル市の土地にコーポラティブ住宅を建設し、市場の半分の価格で提供しています。その事業は疎幸住(疎通がある幸福な住宅:ソンミサンの共同住宅事業を担っている株式会社)が進めていますが、全人口の4分の1が密集しているソウルでは、ソウル市所有の土地がそんなにあるわけではありません。〈暮らしやすいまち〉をつくるためには、土地所有者の問題を解決することが急務の課題になっています。

親から譲り受けた資産や安定的な高収入がある人以外、多くの人にとって〈住宅費〉という固定費は大きな負担になっていることは、韓国も日本も同じです。住宅をめぐるどのような政策があるのか、お互いに学ぶべきことがあるかもしれません。

<桔川純子>