8月 272015
 

排除にあう人たちの中間的支援組織の形成が喫緊の課題
                
かつてなく相互理解の深まった交流に

第6回日韓社会的企業所セミナー(主催・共同連・韓国障碍友権益研究所)は8月1-2日、韓国側28名、日本側96名の参加でコンパクトではあるが充実した内容で行われた。昨年のセミナーは、新設されたばかりのソウル市社会的経済支援センターで、2回めの時、都庁や国会で発言されたイ・ウネさんが所長として歓迎していただいたが、今回は明治大学日欧社会的企業比較研究センターとの共催で御茶ノ水の明大グローバルフロントで開くことができた。

韓国では、早くから在野の社会的経済連帯会議(現在は共同社会連帯会議)が活躍し日韓セミナーを支えているが、今回、協賛・後援に多くの団体の協力をいただいくことができた。今回も来日された初代友権益研究所長のキム・ジョンヨルさんは、今は障がい者就労の社会的企業リドリックの社長で、韓国社会的企業中央協議会会長でもある。

今回、セミナーは初日の全体会、2日目の分科会併せて16本の講演や報告があり、通訳の皆さんの頑張りもあって、これまでのどの会よりも中身の濃いセミナーとなった。私は第1回からすべてに出ているが、法制化を実現している韓国の課題と法制化が実現できていない日本での、社会的排除にあう人々の就労を創りだす社会的事業所の見学を含めてこんなに相互理解が深まったことはなかった。

基調報告するイ・インジェ教授

基調報告するイ・インジェ教授

挨拶に立った斎藤共同連事務局長は、日本の生活困窮者自立支援法の出口なき中間的就労の問題点を指摘して始まった。基調講演のイ・インジェ教授は、韓国の社会的経済 (2015年 6月)が ① 社会的企業 1,350、②協同組合 7,409 (一般 7,066, 社会的301, 連合会42)、③ムラ企業 1,400、④自活企業 1,340の生成を踏まえての支援制度のあり方に触れた。基調講演の藤井敦史教授は、労働統合型社会的企業の視点から、それは日本では少数であるだけでなく、分裂的な市民社会と中間的支援組織が育っていないことを指摘した。

翌日の分科会①「社会的企業・社会的事業所をめぐって」では、「法制度の現状と課題」と「実践現場からの報告」が、分科会②「障害者差別をなくす取組み」では、韓国・障害者差別禁止法と日本・障害者差別解消法についての議論、障害者差別の実態と取組みが具体的に議論された。また今回のセミナーの受入れ・設営・案内に当事者が積極的に参加、ハングル表記などのていねいな心配りは好評で、交流会で交歓した。その話の中で、韓国側の「生きづらい人」には「妊娠で退職後に出産し再就職する方」も含まれると聞いて、その柔軟さに感心していた。

日本の「社会的事業所」を訪問・交流・食事も企業組合あうんのリサイクルショップを見学

セミナーの前後に、日本での障がい者が働く職場見学も組まれ、韓国の人たちは共同連やワーカーズコープ、ワーカーズ・コレクティブ、企業組合の拠点見学をおこなった。

韓国では2007年の「社会的企業育成法」の「脆弱階層」規定に従って当事者への就労の場づくりが進み、「協同組合基本法」やソウル市の「社会的経済基本法」によって、若い意欲持つ若者が今回のセミナーに参加している。しかし、日本にはこうした法制がない中、さまざまな分野で小規模な障がい者の働く場が工夫して創りだされている。それを見学したいという強い要望で、企業組合あうんの中村光男さん運転のバスで2日間駆け巡った。

共同連あしたや共働企画の店舗を見学7月31日、多摩市の団地の中で4ヵ所の事業所をもつ共同連あしたや共働企画を見学・昼食を共にした。団地内スーパーが4件も倒産する中、B型だが最賃を意識した働き方で奮闘する。そのあと八王子のワーカーズ・コレクティブ・こすもすを訪ね、夕食もとった。企業組合花結びやエコショップ元気広場と3軒並んでいる生活クラブ運動グループの空間を見学した。

企業組合あうんでの交流会[/caption]セミナー明けの3日は、千葉のワーカーズコープのオアシスが中心になって運営する、始まったばかりの生活困窮者自立支援法の生活自立・仕事相談センター稲毛の実践を聞いた。応援ネットワークちば企業体の中間支援組織が受け皿になっているのが特色。北区赤羽のNPOわくわくかんの精神障がいの就労継続A型事業配食サービスを見学、その弁当を食べた。A型は最賃以上の労働条件を持つ韓国の社会的企業に近い形態だ。ラストは、荒川でホームレスやシングルマザーが企業組合をつくっているあうんのリサイクルショップと便利屋事業を見学。そのあとフードバンクのある倉庫の2階の部屋で学習し、ショップで夕食会。韓国のような制度がない中での小規模・多機能の社会的事業所の自主的・自律的試みをどう感じたか、韓国でも支援から持続的存続が焦点になりつつあるだけに興味深いところ。

来年は、第7回を韓国で開催することになる。併せて第5回のアジア障害者交流大会をシンガポールで開催する予定で、韓国側と調整している。

文:柏井 宏之/NPO法人共同連運営委員

企業組合あうんでの交流会

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