9月 282015
 

【週間プレシアンビュー】 小作農管理人の経済学

若い組合員も小作農管理人という言葉、ご存じですね? 通常、従来の大地主は、自分の水田、畑が正確にどこにあるのかも知りませんでした(長官聴聞会を見ると、今でも同様のようです)。小作農たちは、自分で判断して耕作し、“小作半数制(収穫物の半分を小作料として出すこと)”のような「規範」に基づいて収穫物を地主に納めました。しかし、日本植民地時代になると話が変わります。日本の農法を導入して、農作業をいちいち統制するなど(イ·グァンスの小説を見れば、小作農管理人が田植えを指揮する場面が出てきます)、生産自体を増やすことに関心を傾けるようになります(学界では「富農型地主、経営型地主」と呼びました)。小作農を管理する小作農管理人(最近の言葉でいえば中間管理者とでもいいましょうか?)の役割が突然大きくなりました。そうして多くの場合、小作農管理人は、農民たちの恨みを一身に受けて、小作争議の際に真っ先に攻撃を受けたりしたのです。したがって、農民の小作争議を防ぐことも小作農管理人が必ずしなければならないことでした。植民地支配の代表的な戦略であった「分離と支配」は、全国津々浦々で小作農管理人が好んで使った戦略でもあったでしょう。

最近を見ても、私たちの社会に小作農管理人が本当に多いようです。支配階層の利益のために自分の能力を総動員する官僚体制、そしてマスコミと学界が代表的です。官僚は水田、畑に出て農民を指揮 -制御する「実践型小作農管理人」だとすると、メディアや知識人は、仲違いと広報を担当した「構想小作農管理人」といったところでしょう? 「大東亜共栄圏」と「内鮮一体」を叫んだ日本植民地時代の知識人と違わないという感じです。現在、韓国の財閥-経済官僚-保守言論の三角同盟は、地主と小作農管理人の体系でもあります。

小作農管理人の使命は確かです。地主がうまくいってこそ自分もいい生活ができ、さらには農民たちも彼らの言葉に従うことが唯一の道だと信じるようにする必要があります。自らそれを信じるならば、それ以上いうことはありません。日本の植民地時代末期の知識人たちが「日本の勝利」を信じて疑わなかったのと同じです。去る27日に発表された「青年雇用絶壁解消総合対策」もそのような例の一つです。政府による発表文を直接みてみましょう。

分離と支配

今、私たちの経済は非常に良くありません。慢性疾患を患う患者は、少しの外部ショックでも集中治療室に直行することになります。財閥自らもよく知っています。しかし、確実に出口を見つけられなかった者は、いったん過去の手法を強化して確実な利益を得ようとします。下請け単価の引き下げとか、路地商業圏の掌握がそのようなもので、景気悪化と「3世継承」のために、今後より一層激しくなるでしょう。そして政府、すなわち実行型小作農管理人たちがかねてからの願い事を実践すれば、投資を増やして経済を生かしたいと強調します。いわゆる「経済革新=規制緩和+構造改革」がそれです。

構造改革は、刃物を振り回すことです。そのため、一般大衆から「敵」を分離して孤立させ、次にそれらを除去する必要があります。公共部門の改革では、公務員がその敵であり、労働(市場)改革では「大企業の正規職労働者」がまさにそうです。小作農の中でも事情が良い農民(実際に彼らは地主と利益を共有することもありました)を敵とするのです。もし潜在的に最も危険な貧農が彼らを攻撃する先兵になったら、花を添えることになります。まさに青年と非正規職です。

こうして「公務員年金改革」の時は、現在の年金をそのままにしてしまうと、「未来世代」が、その荷物(年金赤字)をすべて背負わなければならないと騒ぎ、今度は青年たちの仕事がないのは正規職が独占するからだと主張します。すなわち、労働市場の硬直性のために青年たちが仕事を得られないということです。

「改革をしなければ、韓国の未来は暗く、特に、未来世代に借金を残すことになり、彼らが耐えなければならない分が非常につらく、苦痛の繰り返しになるだけです。特に労働改革は、生存のために必須の戦略、世代間の共生のための時代の課題」(朴槿恵)、であり、「労働市場改革は青年雇用と直結しているだけに、政府は、確固とした意志を持って、これを推進していくこと」(チェ·ギョンファン)、「労働市場が柔軟な米国とは異なり、韓国の労働市場は非常に硬直しているが、これにより青年のための雇用創出が難しく、多くの青年たちが低賃金に苦しんでいる」(キム・ムソン)という主張はこうして出てきたのです。

今、政府が青年たちのためにどれだけ苦労しているかを知らせる必要があります。「青年雇用絶壁解消総合対策」という切実なタイトルは、だから出てきたのでしょう。この対策自体には、殆どけちの付けようがありません。原因分析から対策まで、EUなどが出した報告書や、OECDとILOの勧告に忠実に従っています。

例えば、以下の資料をみてみましょう。

(このレポートは、1)不況期には四重損失(制度の実行に伴う行政費用や副作用)が大きくないため、賃金上乗金は公共勤労より効果的な政策手段である。2)求職関連サービスを統合して包括的なプログラムを提供しなければならない。3)青年労働市場の特徴は、需給の不一致(ミスマッチ)であるため、雇用支援サービスは、非効率的である可能性がある。4)プログラムの目標対象を具体的に設定して異なるプログラムを用意しなければならない。例えば、10代と20代後半のプログラムは異なるべきである。5)経営界と地域のパートナーが計画に参加しなければならない。6)脆弱青年層は、長期失業に陥る恐れが大きいため、早期に介入しなければならない。7)若年層の賃金を下げることは効果的な手段ではない。8)青年層の場合、積極的労働市場政策が高コストを誘発することがあるので、早期に失業状態から脱出するようにする必要がある。9)最新の正確な労働市場情報を提供しなければならない。10)プログラムの点検と評価が不可欠である。11)社会的パートナーの積極的な関与が不可欠である。)

図1:、政府合同、2015、p.5)

図1:<青年雇用絶壁解消対策の基本方針>、政府合同、2015、p.5)

上の図を見れば分かるように、政府の対策は、1)短期雇用の衝撃を緩和するための目に見える雇用創出、2)産学連携と「大学構造改革」を通じたミスマッチ解消、3)雇用支援インフラの拡充と再編で構成されています。すでに参与政府時代の2003年から青年雇用対策が繰り返されただけに、今回の「総合対策」は、その集大成ともいえます。このような構成は、EUのいくつかの報告書やOECDとILO、さらには最近のIMFレポートと同じです。しかし、保守-進歩にかかわらずメディアの評価はあまり良くありません。

保守陣営は、大企業に負担を押し付ける短期雇用政策として、労働市場の柔軟化など「構造改革」を強調し、進歩陣営もやはり「選挙のための悪い雇用」を量産する政策であり、大企業と中小企業、正規職と非正規職の格差を解消するように指示しました。つまり雇用補助金という手段について、一方は負担だとし、もう一方は、大企業優遇だと批判しています。また、すべての労働市場の二重構造を解決しなければならないと主張しますが、一方は解雇の自由を拡大するなど、労働市場の規制を解く側であり、もう一方では財閥体制による経済の二極化を強調しています。

両陣営とも、短期インターンや非正規職を作ることによって問題を解決することができないことでは一致しています。例えば、20万人計画の核心は、公共部門と民間部門が賃金ピーク制を導入して、教員の名誉退職および看護サービスの拡大を通じて7万5000人を新規採用するというのです。しかし、賃金ピーク制を導入しても、民間企業がそこで節約されたコストを青年雇用に使うかは確実ではないし、公共機関の場合、割り当てを再設定しようとすると、すべての従業員の給料を減らさなければならないという批判が出てきます。また、実行可能性が高いように見える包括介護サービスにもキャリアから外れた女性が採用される可能性が高いでしょう。教員名誉退職拡大に伴う青年雇用は、ご存知のように教員年金が減る前に自主退職する現象に頼る政策です。

もう一つは、7万5000人を満たしている青年インターン制度に関しても批判の声が高くなっています。過去10年間の経験では、インターンが実際に正規職になる場合がほとんどないことを如実に示しています。インターンはチャン・グレ(【訳注】人気ドラマ「ミセン」の主人公の名前)よりも低い地位にありますから。こうして、進歩-保守を問わず、短期の非正規職雇用の量産であると批判しています。

特に、青年ユニオンが20万人の雇用創出を項目ごとに点検したところ、一言でいえば、新規教員採用2年間4000人を除き、まともな仕事もなく、実行方法や予算の裏付けがない「対策のない雇用対策」だというのです。当事者の話を聞いてみましょう。 政府の「支配と分離」戦略は、少なくとも青年ユニオンには全く通じないわけです。

青年失業対策の方向性―ワークシェアリングと社会的対話

青年の雇用問題は、韓国だけが頭を悩ませているわけではありません。ヨーロッパや日本では、すでに1990年代から問題になり、数多くの解決策が提示されましたが、残念ながら事態は悪化しています。2010年には欧州の財政危機以後、「南側」の青年失業率は、国によって30%から50%に達しているのです。

そうであるなら、このように世界全体で同様の現象が発生した理由は何でしょうか?まず、人口学的にベビーブーム世代の子供たちが労働市場に出てきた時から青年失業問題が深刻になったこと(先進国では1990年代、韓国では2000年代)、第二に、ピケティーが図に示した不平等の深化と理論による長期景気低迷のためである、と私は考えます。この二つの相互作用と、資本主義の黄金期に設計された年金などの福祉制度が財政危機を迎え、高齢者たちは高齢者なりに年金削減という痛みを、そして青年たちは雇用不足の危機を迎えているのです。

(一方、主流経済学は、技術革新を強調します。新しくできた仕事に必要な職能や技術を備えることができず、大規模な失業が発生したのです。いわゆる 「技術と教育の徒競走」です。だとすれば、教育を変えればいいのです。政府の報告書で、「大学教育改編」や需要に適合した教育を強調するのは、この理論に頼っているということなのでしょう。果たしてそうでしょうか?)

だとすると、解決のための重要な流れが進むべき方向もはっきりします。不平等を減らすことでしょう。現在のように規制緩和、労働市場の柔軟化を通じて、企業利益を増やして、彼らの仕事を増やし(いわゆる「落水効果」)、福祉を減らし、財政のバランスを実現するという発想は、方向を逆に取ったのです。 このような政策は総需要を減らし、むしろ事態を悪化させるでしょう。現在の長期低迷がその証拠です。「所得主導の成長」が主張するところがまさにこのような話なのです。

このような経済政策基調の変化、または経済体制にふさわしい政策基調の選択は、経済をはるかに超える意思決定があってこそ可能です。経済学という抽象的な理論の次元で言えば、これまで「雇用なき成長」、「賃金なき成長」、「青年失業」の問題を解決していなかったのは、このような問題を労働市場の中で解決しようとしたからです。労働の需要不足は、企業や公共が算出の増大を決めてこそ解決されます。モノやサービスを吸収するお金があってこそ労働の需要が増えることでしょう。そのお金が上位10%に集まっており、お金を生み出す資産は上位1%に集中しているのであれば、すべての政策が資産家に有利に配置されれば労働需要が伸びないのは当たり前でしょう。

このような全体的な問題を議論するためには、単に労働問題に限った社会的対話機構(労使政委員会)ではなく、より大きな範囲をカバーする社会的対話の場が必要です。特に、韓国の場合は、財閥-官僚-保守言論の三角同盟の支配が不平等の傾向を強化しています。 幸いなことに、青年ユニオンは、このことをよく知っています。

図2:下からの労働市場の構造改革

出典:青年ユニオン、、p.18

出典:青年ユニオン、<政府青年雇用総合対策診断>、p.18

この図が示しているように、青年たちは、自分たちの問題が大企業と中小企業の二極化、そして正規職と非正規職の二極化で始まったということを正確に認識しています。労働の中心部と周辺部の連携により経済民主化と福祉(雇用保険財政の拡充と失業安定網など)を達成したときにはじめて青年失業問題が解決されるのです。感動的な図です。

政府「関係部署合同」、そしてマスコミと学界の優れた彼らが、わずか500人に過ぎない青年ユニオンより知識が少ないわけがありません。しかし、青年たちのように、明確に核心を探り出せないのは、彼らが小作農管理人だからでしょう。そうした面から朴大統領も同じことでしょう。今回の対策も、結局、大企業のコストを削減し、政府が補助して青年雇用問題が解決されるという信頼から出たことなのですから。この報告書のあちこちにも多少突拍子もないサービス市場の規制緩和が含まれているのはそのためです。彼らは地主に直接被害が行く事を何とか防ごうとします。青年雇用割り当て制(チャン·ハナ議員発議)が国会でさまよっているのも、労働時間の短縮に関する法律が漂流するのも、そのためでしょう。まるで1940年代に日本が引き続き勝利するだろうと信じていた植民地知識人と変わりません。

財閥が経済を牛耳り、大学進学率が70〜80%に達する社会で若者たちが仕事を得る方法は、中小、零細企業に就職しても満足してはいけません。政府の報告書にも出てくるよう、中小企業、非正規職の賃金が大企業正規職の35%にすぎないのに、大企業と専門職、公共部門の雇用が全体の15%に過ぎないならば、青年の長期失業、または長期就職準備(スペック作り)は避けられないでしょう。これからエコ世代(ベビーブーム世代の子供世代)が終わるとしても、今のように青年たちが絶望から抜け出せなくなったら、私たちの将来はありません。だから、今後も出生率が世界で一番早く低下するならば、経済と社会そのものを維持することができません。

パク·クネ大統領が強調する創造経済も同様です。新しい技術やアイディアでお金が儲かりそうになったら、その企業を財閥が買収、あるいは不平等な購入契約を結んで利益を奪取しようとするなら、創造的な冒険をする企業が出るわけがありません。財閥方式で創造的な文化や芸術を振興することはできないのと同じです。財閥は、面白い映画が得た利益の半分を横取りする役割を果たしているだけです。

結局、不平等の解消(経済民主化と福祉)とワークシェアリング、そして生態系インフラへの投資(生態は若者たちにとって関心の高い分野のひとつです)が唯一の活路ですが、この問題に関する具体的な話をする機会は今後もたくさんあるでしょう。朴大統領の任期がまだ2年6ヶ月も残っているのですから。

文:チョン·テイン/カール・ポランニー社会経済研究所所長

原文(韓国語): http://m.pressian.com/m/m_article.html?no=128562