12月 272015
 

済州、カネは中国が儲け、道民にはゴミだけ?

済州観光の問題点を象徴的にあらわす事件が最近立て続けに起こった。去る5月末、城山日出峯(ソンサンイルチュルボン)に立てられたアムウエイ(【訳注】amway, アメリカで創業された日用品や化粧品のメーカー。マルチ商法で知られる。)の大型看板と、神話歴史公園の敷地内にできる‘リゾートワールド済州’がまさにそれだ。済州特別自治道が城山日出峯に立てたアムウエイの看板は、高さ6メートル、幅20メートルもある。城山日出峯にアムウエイの看板が立てられた理由は、去る5月31日から6月10日まで中国アムウエイの団体観光客1万7千人あまりが済州島を訪れたからだ。城山日出峯は、天然記念物保護地域であり世界自然遺産に登録されているところだ。この看板を見た人は、“中国アムウエイが済州島城山日出峯を買収したのか”と憤慨していた。

神話歴史公園は、アムウエイ看板に続いて済州社会にまた論争を引き起こしている。神話歴史公園は、済州の独特な神話・文化と歴史を学び体験する複合観光団地という趣旨で済州道と済州国際自由都市開発センター(JDC)が推進してきた。しかし本来の趣旨はどこかに消えて、大規模宿泊施設・ホテルとカジノ賭博場に変質した。神話歴史公園内に入った‘リゾートワールド済州’は香港の不動産開発会社のラムジョングループが世界的なカジノ・複合リゾート企業であるケンティン・シンガポールと組んで推進している。‘リゾートワールド済州’の宿泊施設は、はじめ1300室だったのが4300室と大幅に増え、無いときっぱりしらを切っていたカジノは、実態が明らかになった。「済州の声」はホテルの地下3階にカジノが設計されている図面を入手し暴露した。済州道とJDCが知っていながら黙認しほう助し、道民をだましていたという批判が激しくなりそうだ。

このような状況なので観光がかえって済州を台無しにしているという声が高い。済州道の観光事業は地域総生産の45%を占めている。しかし金は大企業と中国資本が儲けるだけだ、済州道民はゴミばかりしょいこんでいるという不満が出ている。

済州の美しい自然と文化を守りながら、観光から生まれる収益が地域住民に入ってくるような方法はないだろうか?そのような観光の仕方を考えてきた済州道民たちが集まって、2003年‘済州エコツーリズム’という小さな旅行社を作った。現在は済州道の代表的な社会的企業として認識されている。

6月27日、‘4・3ノブンスンギ記念館’に‘済州エコツーリズム’のユン・スンヒ代表を訪ねた。

ユンスンヒ済州エコツーリズム代表が、善屹(ソフル)コッチャワルのツバキ山の解説をしている。

ユン・スンヒ済州エコツーリズム代表が、善屹(ソフル)コッチャワルのツバキ山の解説をしている。

「済州参画環境連帯が2003年、市民活動家を対象に済州の社会、歴史、文化、生態教育を行った。市民活動家教育課程を終えた人と、それまで環境運動に関心があった人、市民社会団体で活動してきた人びとが集まり、わたしたちにとって好ましい旅行社を作ろうとして取り組んだ。それが‘済州エコツーリズム’の出発だった。」

済州エコツーリズムが行おうとしている旅行はどのようなものか?

「わたしたちが知っていて感じている済州を観光に盛り込もうと思いました」という。

済州道は言うまでもなく火山島だ。太平洋という広い海に面している島でもある。陸地(【訳注】済州島などを除いた半島部分)とは、土も石も海も空も風も作物も違う。済州の独特な生態は陸地とは異なる文化と神話、歴史を生み出した。1万8千の神がいる島、その神の数ほど済州の話は無尽蔵だ。

「エコツーリズムを始めたとき、中身は済州の話を取り込み、運営は旅行者の消費が地域に還元されるようにしようと思った。観光客が1千万人来ても飛行機で来てホテルで食べて泊まれば、地域住民に何の利益ももたらさない。地域住民に利益が還元されるようにしようというのが、始めたときの覚悟だった。」

エコツーリズムとは何か。
「環境を保全し地域住民の福祉を増進させる責任を持つ、自然地域としての旅行」と定義した。地域の住民と観光客がみな幸せになる旅行、生態と文化を保全する旅行が生態観光(エコツーリズム)だ。エコツーリズムには4つの原則がある。

エコツーリズムは ① 自然と文化遺産保全に能動的に寄与
         ② 住民参加と開発利益が地域に還元
         ③ 教育および解説
         ④ 個別観光客および小規模団体観光客を対象とする
環境の受容力を考えて小規模観光客を対象にし、知っているほど責任を持った旅行ができるので、必ず教育および解説が伴う。そのため‘済州エコツーリズム’は観光客が地域の住民が運営する宿泊施設に泊まり、食事は地域の農産物で作った地域の食堂で食べられるようにプログラムを組んだ。

‘済州エコツーリズム’はここからもう一歩先に進んだ。地域住民が参加してテーマとなるエコツーリズムを準備している。善屹(ソフル)1里で、2011年から地域住民たちと一緒にエコツーリズム事業を推進している。善屹1里は済州の代表的なコッチャワルツバキ山があるところだ。

去る2月、善屹1里の住民たちが集まって‘わが村の自慢’を定めた。

去る2月、善屹1里の住民たちが集まって‘わが村の自慢’を定めた。

「村人たちが共感するまで待った。はじめは住民たちと懇談会をして教育するのも簡単ではなかった。畑仕事でみな忙しかった。住民たちは自分の村がエコ(生態環境)村になり、TVの環境ドキュメンタリーにツバキ山が出ると、なぜ出るのか不思議がった。わたしたちの会社が善屹でエコツーリズムを1年に2、3度ほど、3年間粘り強くおこなった。すると地域住民たちの観光に対する認識がしだいに変わって来た。そしてラムサール村とエコツーリズム試験村に指定されて地域住民の間に、ツバキ山は宝物だという認識が生まれた。いまは地域住民がツバキ山を開発してはならないと思っている。ここまでに4年かかった。」

善屹1里は世界自然遺産の村、生態優秀の村、ラムサール保護湿地村に指定されたところだ。‘済州エコツーリズム’は善屹1里で4年間事業をしてきた。急がなかった。地域住民と一緒に順々にことを進めてきた。住民教育、懇談会、湿地生態教育をおこない、善屹特産料理開発、ツバキ山モニタリング、地域エコ祭などを住民とともにしてきた。行政、専門家、地域住民、環境運動団体、旅行社で、‘善屹里エコ村協議体’も作った。この2月には地域住民が集まって‘おじさんおばさん、わが村の自慢は何け?’というテーマで、先月の28日には‘おじさんおばさん、わが村が守らなければならないのは何け?’というテーマで住民会議を行った。28日の住民会議では、エコツーリズムをする上で村の原則を定めた善屹宣言文も作った。今年は村人たちが参加するエコツーリズム共同組合も準備中だ。

ツバキ山は済州島中山間地域が破壊される以前の植生をそのまま保っている。

ツバキ山は済州島中山間地域が破壊される以前の植生をそのまま保っている。

ユン代表は「地方政府ではエコツーリズムの観光地だといえばまず道を作り公園をつくる。けれども住民の共感もなく具体的なプログラムもない。エコツーリズムをすると地域にどんな見返りがあるのか、具体的な方案も用意していない。これまでのようにハードウエアをまずつくっている」と、土建中心の事業を批判した。続いて「エコツーリズム村作りにはまず住民の共感が必要だ。これは行政がすることはできない。わたしたちも住民が共感できるようになるまで3、4年かかった。行政は民間と住民がことをうまく進められるように助けなければならない」と強調した。

世界自然遺産である城山日出峯にアムウエイの看板を立てた済州道、エコツーリズムのためにどんな努力をしているか。コジェリャン済州エコツーリズム協議会長は、「よその自治体にはエコツーリズムを担当する部署があるが、済州特別自治道にはエコツーリズムを担当する部署もなく、担当者もいない」と言い、「環境部、文化観光部など政府の部署がエコツーリズム事業を推進しても、済州特別自治道はそれを受けて事業をろくにできていないのが今の現実」だと批判した。済州道が観光産業を資本の経済論理でだけ、考えているために生まれた現実だ。

ウグンミン済州道知事は、6月26日、退任のあいさつで‘外国人200万観光客’に道を開いたと自画自賛した。けれども済州観光の果実は済州道民に還元されないでいる。乱開発による環境破壊の被害者は済州道民であり、それによる果実は外国資本や大企業がむさぼっているという不公正な観光だ。済州観光の新たな転換が必要だ。

カンミヘ・ソウル大学農業生命科学研究院研究教授は「いまや観光の量よりは質を考えるとき」だと述べた。カン教授は、「インドネシアのコモド島観光客の類型別一日平均支出を調査したとき、クルーズ観光客は5セント、パッケージ観光客は50ドル、エコツーリズムの観光客は100ドルだった」と言い、「船で食べて寝て現地でお金を使わないクルーズ観光客より現地に長くとどまって食べて寝るエコツーリズムの観光客がはるかにお金を多く使う”と強調した。またカン教授は“カリブ海を運航するクルーズ船は年間7万トン以上のゴミを出すと推定される」と、観光による深刻な環境汚染問題も指摘した。

現在のような開発至上の観光、大規模観光は持続不可能だ。ユネスコは1978年、世界で最初にガラパゴス島を世界自然遺産に指定した。この島はチャールズ・ダーウィンが進化論を研究したところとして有名だ。しかし最近観光客が増えて生態系の破壊が続き、ユネスコは危険遺産に指定した。危険遺産に指定されても自然環境が破壊され続けるなら、世界自然遺産指定は取り消される。

済州島で世界自然遺産に指定されているのは、漢拏山(ハルラサン)、城山日出峯、拒文岳(コムンオルム)溶岩洞窟系だ。そのうち拒文岳だけは、観光客を一日400人に制限している。イジフン済州エコツーリズム協議会理事は、「漢拏山と城山日出峯が心配だ。今のように自然環境が破壊され続ければわれわれもガラパゴス島のようにならないはずがない」と指摘している。イジフン理事は漢拏山を済州道生態1番地に挙げて、次のように述べた。

「韓半島に分布している植物4500種のうち、2000種あまりが済州島に分布している。漢拏山があるために可能なのだ。済州島がないとしたら、韓半島の植物種多様性は2500種あまりにしかならない。漢拏山の頂上付近に生えていたイワウメの‘アムメ’と岩高蘭(ガンコウラン)はいまやほとんど見当たらない。高山植物で北極に生えているこれらの植物が漢拏山にあるのは、氷河時代に陸地とつながっていたという証拠だ。中国ではこれらの植物を特別に保護している。」

ユン代表は「すべての観光をエコツーリズムにすることはできない。それでもエコツーリズムの比率を高めていって大衆観光も健康な観光に転換させなければならない」と強調した。旅行文化は変わっていっている。観光地中心の旅行から歩く旅行、生態と文化を探求する旅行に変わっていっている。済州特別自治道は立ち遅れている。去る23日から25日まで拒文岳世界自然遺産センターで済州エコツーリズムアカデミーが開かれた。善屹1里と下礼(ハレ)里、楮旨(チョジ)里の住民など45人が出席した。参加者たちは済州エコツーリズムの問題点として‘行政の無理解’‘観光地乱開発’‘住民と公務員のエコツーリズム認識不足’を挙げた。

去る23-25日、行われた済州エコツーリズム・アカデミー

去る23-25日、行われた済州エコツーリズム・アカデミー

済州道とは異なる事例もある。順天(スンチョン)市は順天湾自然生態公園とその周囲の農地から電柱280本を撤去した。自然そのままの景観を作ろうと努力すること。電柱を撤去すると、タンチョウヅルの数が10倍に増えた。目を遮るものがないすっきりした景観を見ようと順天湾を訪れる人も増えた。世界自然遺産に大型看板を立てた済州特別自治道と電柱を取り除いて自然と人間が共存する沿岸湿地を作った順天、済州道はいまやどのような選択をするのだろうか。

文:パク・ジニョン/前公共運輸労組連盟組織局長

原文(韓国語): http://www.pressian.com/news/article.html?no=118427

翻訳:コリ・チーム/波多野淑子