9月 292010
 

 

「美しい財団が夢見る世界とは、ナヌム(分かち合い)がまた別のナヌムに繋がっていく世界です」。

「美しい財団」のAnnual Report『ナヌム家計簿』 は、そのような件から始まっています。

「財団法人美しい財団」は2000年に寄付文化を韓国社会に根付かせることを目的に設立され,現在では、年に100億ウォン(約9億円)にものぼる寄付金が集まる財団となっています

 

「美しい財団」を設立した朴元淳弁護士は、「美しい財団」の運動について、昔は韓国社会にあった「ナヌム」の習慣をもう一度現代社会に再生する運動なのだと語っています。「美しい財団」は、公益的な活動に従事するNGO・NPOを支援する団体として、「個人のためのコミュニティ、コミュニティのための個人」「公共の利益の社会へ波及・拡大」「将来・次世代について考える社会」の形成を目標に掲げています。

そのような目標のもとで推進されている事業は、募金活動、寄付金の分配、CSRプログラムの提供、寄付文化のリサーチ、フィランソロフィーに関する教育などがあります。

「美しい財団」では、「寄付は科学であり芸術だ」というコンセプトのもと、単に情緒的に訴えるというのではなく、印刷物やノベルティグッズのデザイン、さらにキャンペーンの方法など、斬新な工夫が凝らされています。

募金活動の中心は「一%ナヌムキャンペーン」です。「一%」というのは、「誰もが参加できて、少額の、個人が無理なくできる範囲で寄付をする」ということを象徴しています。自分の給与から、お小遣いから、年金から、また各自が持っている才能や経験からも、その一%を寄付してお互いに助け合おうというものです。

そのほかには個人や企業の名前でファンドをつくり、寄付者の意思にもとづいてその寄付分配が行われるファンド事業もあり、個人ファンドは85を超えています。

個人のファンド第一号は元従軍慰安婦の金君子(キム・グンジャ)ハルモニ(おばあさん)が貯金を全額寄付してつくられた「金君子ファンド」です。教育を受けることができなかった金君子ハルモニが、一人でも多くの子どもたちに教育を受けさせてあげたいという思いからファンドが作られました。

また、化粧品会社として有名なアモーレパシフィックの創業者が、その遺産の一部を寄付した寄付金は、低所得層のシングルマザーの自立支援のファンドになっています。それは「希望の店」という名称で、彼女たちが自立して生きていくために「起業」を支援するというものです。「希望の店」一号店、有機野菜を用いたチゲの店「ミジェヨン」は安国洞の会社員たちで賑わっています。

このような取り組みは「分かち合い、慈善を超えて変化へ」という「美しい財団」が現在掲げているスローガンのように、より実践的な支援を行っていく試みと言えるでしょう

 

また、「美しい財団」の寄付の特徴は、インターネットを通じた寄付が多いということです。インターネットで寄付をするときにも、ほかの方法で寄付するときと同じように、「貧困」「差別」「代案」「地球社会」「未来世代」「公益団体」「分かち合い文化」といった自分が支援したい領域を指定して寄付をすることができるようになっています。韓国を代表するポータルサイト「ネイバー」と協力して行っている「ハッピービーン」プロジェクトは、ネチズンと市民団体との出合いをつくり、寄付ができるようになっています。寄付はカード決済や、銀行振り込みで行われていますが、インターネットを通じての寄付が非常に多いのはIT先進国、韓国ならではかもしれません。

組織の運営では「透明性・信頼性」を何より重要視し、寄付金がどのように使われているのか、分配金の詳細やスタッフの給与に至るまで、インターネットですべて公開しています。そして専門性をもったスタッフが、大学教員や弁護士をはじめとした専門家たちと協力して、寄付金の分配事業を行っています。また、運営コストを個人寄付の5%以下、企業寄付の10%に抑えてできるだけ多くの寄付金を分配する努力をしたり、徹底的に情報を公開することによって、「美しい財団」は多くの人から信頼を得ることに成功しているのです。

2004年には、財団のなかに韓国初の非営利公益弁護士グループ「共感(コンガム)」が誕生しました。「共感」は、社会的弱者、少数者の人権問題を中心に、市民団体の法律に関わる問題や、公益的な訴訟の支援を行っています。「共感」の弁護士たちは「美しい財団」の職員という位置づけですが、いずれは独立した組織にする予定です。現在「共感」に所属する弁護士は現在7人ですが、韓国でも難関試験の一つである司法試験に合格して「共感」の仕事に関心をもつ人は稀だそうです。

また、幼い頃から「分かち合い」というマインドを教育するための「ナヌム教育」は、学校の教師やコンブパン(地域教育拠点)の教師たちが教材をつくったり、子どもや親たちへワークショップを行ったりとさまざまな努力を重ねています。「ナヌム教育」での出会いは、研修を受ける機会の少ないコンブパンの教師や地域の保護者たちを対象に、学校の教師たちがセミナーを開くなど、地域で知識の「分かち合い」という新たな「ナヌム」の循環を生み出そうとしています。

「美しい財団」は、現在「慈善を超えて変化へ」というスローガンを掲げています。それは、市民団体の活動を後方から支援するということから、さらに一歩進んで、社会を変化させることを目指すということです。

日本でも、NPO活動の活性化のために「寄付文化の創造」が言われ、ファンドレイジング講座なども拡がってきています。「美しい財団」の取り組みは、日本の市民活動にとっても参考になる点が多いのではないでしょうか。